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霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会

霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会

霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ
霞ヶ浦水産研究会

 霞ヶ浦北浦は、たくさんの種類の魚が生息する生き物の宝庫です。なかでもシラウオは、明治から昭和にかけて盛んに行われた『帆びき網漁(※)』の主対象種として漁業者の暮らしを支えてきました。獲れたてのシラウオは、無色透明でキラキラと輝くことから、地元漁師は「ダイヤモンド」と呼ぶこともあるとか。
シラウオの仲間は、沿岸域や汽水域に生息していますが、霞ヶ浦北浦のシラウオは湖で一生を過ごします。シラウオは、ハゼ科の"シロウオ"やイワシの稚魚"シラス"とは別の種類で、寿命は1年です。味は、淡白ながら甘味とほど良い苦味があり、脂肪が少なく、とてもヘルシー。醤油や酢味噌などで食べるお刺身や、地元の伝統食である煮干や佃煮に加え、かき揚げや卵とじ、お吸い物に天ぷら、珍味である塩辛など、さまざまな調理方法で味わえます。
今回紹介する霞ヶ浦水産研究会は、霞ヶ浦漁業協同組合の若手漁業者を中心に平成27年に発足した組織です。シラウオ、ワカサギ、テナガエビなど霞ヶ浦で漁獲される魚の品質と価格の向上を目的として発足しました。メンバーは現在7名です。会長の伊藤一郎さんを中心に、他漁協や水産加工組合等にも呼びかけ、国内有数の淡水漁業産地の活性化を進めています。
※帆びき網漁…大きな帆を張って、風の力で船を流しながら漁をする漁法。現在は観光漁業として霞ヶ浦の風物詩にもなっている。

1.船上・漁レポート

鮮度が命!短期決戦の漁

 11月の午前4時45分、気温6度。霞ヶ浦の北東部にある「手賀第二舟溜」から、霞ヶ浦水産研究会(以下研究会)の会長・伊藤一郎さんがこの日2度目のシラウオ漁に出港しました。現在のシラウオ漁は、動力船の後方に網を入れて曳く、通称「トロール」と呼ばれる方法で行われています。

  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 鮮度が命!短期決戦の漁
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 寒さが厳しくなってくる寒曳きのシーズンでも、研究会のメンバーは、デリケートなシラウオの鮮度をできるだけ維持する為に『長時間漁をしない』、『獲ったらすぐに氷を入れる』など品質管理を徹底しているそうです。例えば、会長の伊藤さんの自宅と作業場は、舟溜の目の前にある為、1度漁をしては戻り、天候が良ければ再び出港することも少なくないのだとか。「できるだけ早く水揚げして、早く選別に回す方が鮮度が保てます。曳く(漁をする)時間は、最長でも1時間。"より鮮度がいいものを"と注文を受けた時は、30分で漁を終えるようにします。」と伊藤さん。
 湖上は真っ暗ですが、魚が逃げてしまうため、航海灯以外には船の行き先を照らすライトは無し。それでも伊藤さんの船は迷いなく進みます。「沖にコイの養殖場があるから、それを目印にしています。」素人目には何も見えなくとも、漁師歴40年の伊藤さんにはしっかりと進むべき方向や他の船が見えているのです。
 通常は、水面近くを泳いでいるシラウオ。「とてもデリケートな魚だから、雨だったり風が強かったりすると、すぐに湖の底の方に潜ってしまう。天候には大きく左右されますね。」と伊藤さん。漁場は、その日の風向きで決めるそうで、伊藤さんは船に乗る前に風向きを確認してから出港し、20分ほどで目当ての漁場に到着しました。
 漁場に着くと、すぐに網を投入し、いよいよシラウオ漁の開始です。

熟練の操船技術

 歩くよりも遅い、時速3キロ程のスピードで船を走らせながら、舵輪(だりん)を握る伊藤さんの表情がきりりと引き締まります。網を曳くロープ、前方、周辺を常に見廻し、絶妙なハンドルさばきで操船していきます。「網に向かって出ているV字のロープをなるべく並行に保つようにしています。そうすれば水中の網も並行になり、安定して曳くことができる。あとは、網に船のスクリューの波ができるだけ当たらないように操船することが大事だね」と、伊藤さんはハンディライトで湖面を照らして見せてくれました。スクリューの波が網を避けているように見えましたが、実際には、伊藤さんの操船技術がそうさせているのでした。

  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 熟練の操船技術
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2.品質への配慮

魚を揚げたらすぐに氷を入れる

 魚群探知機を確認しながら操船を続ける伊藤さん。雨のため、シラウオは水深4~5m辺りまで潜ってしまっているようで、『いつもより深めに網を沈める』ことに集中していました。 ようやく明るくなりはじめた午前6時頃、「そろそろ網を揚げましょうか。」の声と共に船を停め、動き出す伊藤さん。同乗していた若手漁師の石間さんと共に網揚げです。網をさばきながら船の横に回し、2人息の合った動きで力強く網を手繰り寄せていきます。
 「ほら、これがシラウオ。まだ生きてるね」そう言って見せてくれたのは、透明でガラスのように美しく元気なシラウオ。獲れたては無色透明ですが、数分で白くなってしまうそうです。「この透明感が鮮度の証。なんとかこの透明感を維持できるように努力しています。」と伊藤さん。
 今年はシラウオ漁が好調なため、1回の漁で平均100kgほどの漁獲があるそうですが、この日は天候の影響で70kgほどとなりました。

  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 品質への配慮
  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 品質への配慮
  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 品質への配慮

 網からシラウオを魚箱に移すと、すぐさま持参した氷を入れ、鮮度を保ちます。「今は、研究会メンバーだけでなく40名近い霞ヶ浦漁協のトロール漁師みんなが、こうして鮮度に気を遣っています。」デリケートなシラウオならではの品質への配慮です。

  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 品質への配慮

3.選別作業

  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 選別作業
  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 選別作業

素早く、丁寧に選別する

 漁を終え、作業場に戻ると、伊藤さんの奥さま・亜子さんが、既に選別の準備をして待っていました。
 シラウオ漁で最も重要なのが、漁師言葉で"ザップがけ"と呼ばれるこの選別作業です。水を張ったタルに、漁獲したシラウオを入れ、ザップと呼ばれる漁師自作の選別網を使ってワシャワシャとシラウオ以外の小魚などを落として行きます。「タルの水は、シラウオの鮮度を保つために氷を入れて冷やしておきます」と亜子さん。「簡単にやっているように見えるけど、ふるい方にはコツがあって、やったことない人にはできないよ。」と伊藤さん。

 シラウオ以外のものが入っているとクレームになってしまうため、出荷する際にザップがけをきっちり行うことは、産地全体の信頼に繋がるのだそうです。

  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 選別作業

4.検品・出荷

 漁獲されたシラウオは、通常は地元の加工業者などに直接持ち込まれ、煮干や佃煮などに加工されたり、生食用にパック詰めされたりして、店頭やスーパーなどで販売されています。
 一方、寒曳き漁が本格化するこの時期は、漁協が中心となって共同の集・出荷の取り組みも行われます。

午前8時。十分に"ザップがけ"の済んだシラウオを、共同出荷用のカゴに、15kgずつ入れて再び氷を加え、霞ヶ浦漁業協同組合へと運びます。
 同漁協でシラウオを共同出荷するのは、約40名の漁師たち。漁協に到着するとすぐに、漁師自らが計量して漁協職員に報告。漁協職員は、計量済みのシラウオに異物等が混入されていないか厳しく検品します。また、計量を終えた漁師たちも共同で検品を行います。「共同出荷は、出荷者全体の信用問題に関わりますから、異物は、どんなに小さくても必ず取り除きます。検品は、漁協の方だけにお任せするのではなく、出荷する漁業者全員で行うようにしています。これによって漁業者同士の相互チェックが働き、品質に対する意識向上にもつながっています。」と伊藤さん。
この日の共同出荷量は約1.5トン。トラックに積まれて加工業者へと運ばれて行きました。

  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究 再度選別・出荷
  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 再度選別・出荷
  • 霞ヶ浦のダイヤモンド「寒曳きシラウオ」霞ヶ浦水産研究会 再度選別・出荷

5.漁師のおかみさん直伝!シラウオレシピ

☆伊藤亜子さんに、手軽で簡単な「漁師のおかみさんレシピ」を紹介してもらいました!

 シラウオの磯辺揚げ

激うま!シラウオの磯辺揚げ

  • 材料(3~4人前)
  • ・シラウオの釜揚げ 約200g
  • ・小麦粉 大さじ3
  • ・水 大さじ3
  • ・青のり 大さじ1(お好みで)

作り方

  • 小麦粉と水を合わせてよく混ぜる。混ざったら青のりを加えて再び混ぜる。
  • 1にシラウオを入れてサッと混ぜる。
  • 180℃の高温の油に、シラウオを一口大にまとめてたものを入れる。
  • 2~3分ほどで表面がカラっとしてきたら油からあげ、油をしっかり落として完成!お好みでマヨネーズや醤油と一緒に食べてください♪

 大根の葉とシラウオのごま油炒め

大根の葉とシラウオのごま油炒め

  • 材料(4人前)
  • ・シラウオの釜揚げ 約300g
  • ・大根の葉 1束
  • ・ごま 小さじ1~2
  • ・鷹の爪 お好みの量
  • ・醤油 大さじ1
  • ・砂糖 大さじ1
  • ・和風だしの素 小さじ1
  • ・ごま油 ひと回し

作り方

  • 大根の葉を千切りにして炒め、しんなりしてきたらシラウオを入れる。
  • 砂糖、醤油、和風だしの素、お好みで鷹の爪を入れてなじませる。
  • なじんだら、ごまを入れ、仕上げにごま油をひと回し入れて完成!

 生シラウオの塩昆布あえ

生シラウオの塩昆布あえ

  • 材料(2人前)
  • ・生シラウオ 約100g
  • ・塩昆布 2つまみ程度

作り方

  • 生シラウオと塩昆布をあえる。
  • 少しなじませて完成!

レシピ提供:伊藤亜子さん

※このページの情報は2017年12月時点のものです。

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