PICK UP / 茨城のうまいもの特集
山口楼本店 料理長相田昌弘(水戸市)
当たり前にあった“料理”という存在
明治5年創業、140余年の歴史を持つ老舗の料亭「山口楼」。水戸市の繁華街大工町に本店を構え、大洗などにも展開し、あんこう鍋など、茨城で育まれた食材を中心に使用した日本料理を提供しています。 名店の料理を手掛けるのは、相田昌弘さん。30代前半という若さで料理長に就任しました。 相田さんは、茨城県常陸大宮市の出身。“料理”という存在は、幼い頃から当たり前にあったといいます。 「両親が共働きだったので、祖母が面倒を見てくれました。祖母は明治生まれの古い人で、自分で米や野菜を作ったり、山に山菜を採りに行ったり、自給自足に近い生活。祖母が味噌を作る時にかまどで炊いた大豆の味は今でも忘れられません。あらゆるものを自分で作るという環境で育ったので、料理は“生活の一部”でした。料理自体が面白かったし、好きでしたね。久慈川で鮎を釣っては塩焼きにしたり、鯉をさばいて味噌で煮込んだ“鯉こく”を作ったり。中学生の頃はなぜか“発酵”にはまって、納豆とか作っていましたね。」
人生を大きく変えた親方との出会い
高校時代は、割烹でアルバイトをしていたという相田さん。進路を決める時、担任の先生から調理学校への進学を勧められましたが、「料理はいつでもできる。ずっと人の食事を作り続けるのは嫌だ。」と一度は断ったそうです。しかし、アルバイト先の社長が強く推してくれたこともあり、しぶしぶ調理学校へ通うことになりました。 その後、学校の校外実習先となったのが山口楼でした。当時の料理長との出会いが、相田さんのその後の人生を大きく変えたそうです。 「親方(料理長)は、都内でも指折りの料亭出身の方で、日本料理の伝統や文化、その技術などを、熱く語ってくれました。技術が高く、知識も豊富で、毎日勉強になりました。私にとってそれまでの料理は、味がどうなるか想像しながら目の前の食材を調理するだけのものでしたが、親方の話を聞いて、日本料理の伝統や文化、脈々と受け継がれてきた技術があったことを知り、『日本料理の伝統、文化を守りたい』と思うようになりました。」 実習終了後も、時間を見つけては親方の元へ足を運んだという相田さん。その熱意は、山口楼の社長にも伝わり、新卒として初めて山口楼本店への就職が決まったそうです。
守・破・離
「本店での仕事はもちろん、当時10店舗ほどあった山口楼系列のお店の手伝いにも行かせてもらって、常に走り回っていた忙しい毎日でした。先輩や親方には、怒鳴られながらも本当に多くのことを学ばせてもらいました。」 料理長の元で腕を磨き、知識や技術を身に付けていった相田さん。その期間は13年にも及びましたが、2010年には、料理長が退社したことにより、後任に抜擢されたました。 「3年くらいは、自分が親方になったことを周りに自信を持って言えませんでしたね。当時の自分には責任が重すぎました。親方に勧められたある本に、こんな一節がありました。あらゆる道の修行における順序段階は“守・破・離”、この3段階だと。“守”は、教えを守り私意をはさむことなく、ひたすら師に仕える段階。“破”は、いままでの教えを基礎として自分の考えを創造する段階。“離”は、師の元から離れて学んだ内容をさらに発展させる段階。これを読んで、『守』は13年やってきた、これはかけがえのない財産。ここまできたら、あと2つの段階をやるしかない、と思いました。自信のない親方では、自分の下に付いてきてくれる人達に申し訳ないですし。」
食材そのものを吟味
相田さんの料理は、新鮮な食材の旨味を生かした味付けと、四季の季節感を生かした色鮮やかな盛り付けが特長です。時には筍を器に仕立て、時には皿をキャンバスに見立て、食材の形や色の美しさを表現しています。 食材の仕入れは、できる限り自ら市場や直売所などに足を運ぶという相田さん。茨城産の食材についても「自然といつも使っている」とのこと。 「食材にはそれぞれ個体差があります。ブランド名が付いているものでも同じです。日本料理の教えに“旬より活(いけ)”という言葉があるように、もちろん旬のものはおいしいのですが、そればかりにとらわれずに実際に食材を見て、吟味して選ぶよう心がけています。」 1つのコースで何十もの食材を使うこともあるという山口楼のメニュー・献立。季節と食材、時には予約者のアレルギーなどにも細かく対応しています。また、調理場にかざす献立は、相田さんが毎日で筆書きでしたためるなど、細部にもこだわり、日本料理の伝統の仕事が生きています。
インフォメーション | |
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名称 | 山口楼本店 |
住所 | 完全予約制 |
お問い合わせ |
TEL: 029-231-1231 |
WEBサイトURL | |
アクセス | 完全予約制 |
その他の情報 | ※この情報は平成29年7月時点のものです。 |
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