いばらきの食に挑戦する人たち
茨城を代表する地鶏 奥久慈しゃも 伊澤孝文さん(大子町)
奥久慈しゃものおいしさに魅了され
日本三名瀑のひとつとして知られる"袋田の滝"をはじめ、自然溢れる奥久慈。この豊かな自然のなかで育てられ、全国特種鶏(地鶏)味の求評会で日本一に選ばれたのが「奥久慈しゃも」です。「奥久慈しゃも生産組合」の組合員10名の手によって、通常の3倍の手間ひまをかけて生産されている奥久慈しゃもは、低脂肪で歯ごたえが強く、味にコクがあります。その味の評価は高く、県内外の食材にこだわる料亭やレストランでも注目の食材として、多くのファンを集めています。 「奥久慈しゃも生産組合」の組合員、伊澤孝文さんは、奥久慈しゃもに魅了され、東京から家族と共に大子町に移り住んだそうです。 伊澤さん「栃木県の宇都宮市出身で、東京に出て、大型タンクローリーの運転手をしていました。ある日、テレビで奥久慈しゃもを紹介していたのを見て、気になって購入したんです。食べてみると、そのあまりのうまさに感動しまして。それから奥久慈しゃもの事を色々と調べたんです。そしたら、奥久慈しゃも生産組合で生産者を募集しているという記事を目にして。こんなにうまい鶏を、自分で育ててみたいと思い、思い切って大子への移住を決めました。」 こうして伊澤さんは「奥久慈しゃも生産組合」の一員となったのです。
新規就農の苦労
東京から、まったくと言っていいほど環境の違う大子町に移住し、新規就農をした伊澤さん。新しい土地での生活が整うまでには、様々な御苦労があったそうです。 「一番大変だったのは、農地探しです。養鶏は、ただ畑を借りるだけでなく、土地に基礎打ってコンクリート流して鶏舎を建てます。それを皆さん嫌がって、なかなか貸していただけなかったんです。今農地を借りている大家さんに出会うまで、一年くらいかかりました。」理解ある大家さんに出会い、無事農地を貸りることができた伊澤さんは、鶏舎を4棟建て、「奥久慈しゃも生産組合」の先輩方に色々な事を教わりながら、奥久慈しゃもを生産する生活を始めたそうです。
奥久慈しゃもはデリケート
しゃもは「軍鶏」と書くように、もとは闘鶏用ニワトリのため、とても気性が荒い一方、神経質な鶏なのだそうです。 伊澤さん「少しの音で大暴れするんです。暴れながら、鶏舎の角に集まろうと必死になって、奥のしゃもを圧迫死させてしまうんです。だから、鶏舎の角に棒を置いて逃げ場を作ったり、鋭角な角にしないうようにしたりして工夫しています。」 また、組合の先輩に習って、少しでもしゃもを音に慣れさせるため、鶏舎の中に一日中ラジオや音楽を流しているそうです。
鶏舎の室温管理
1㎡あたり10羽で平飼いというのびのびとした飼育法で育てている奥久慈しゃも。しかし、大子町は、山に囲まれた地域特有の大きな寒暖の差があります。 伊澤さん「大子は夏暑く、冬寒いんです。特に冬の寒さは厳しくて、鶏は寒いと何百羽もが寄り添って暖をとるんですが、その中心にいる鶏が圧迫死してしまうんです。ですから、冬は暖房を朝から晩まで炊いています。室温も、鶏の成長に合わせて変えなければなりません。ひよこ部屋は真冬でも35℃をキープしていないと、死んでしまいます。それぞれの成長に合った鶏舎の温度管理が、とても大事なんです。」更に、弱い鶏は隔離して育てるなど、十分な配慮をして、ストレスを軽減させることに努めているそうです。
オスとメスの味わいの違い
奥久慈しゃもは、オスとメスでは、味わいが大きく変わるそうです。そのため、「奥久慈しゃも生産組合」の事務局兼販売店舗では、オスとメスを分けて販売しているそうです。 伊澤さん「鍋にするならメスがおすすめです。メスは脂がのっていて、オスより柔らかい。でも、シンプルに食べておいしいのは、オスです。オスは歯ごたえがあり、味が濃いので、これぞ奥久慈しゃもといった味を堪能できると思います。」
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伊澤さんに、今後の夢をお聞きしました。 「現状、「奥久慈しゃも生産組合」の組合員が、少ないんですよ。自分が一番若いんです(伊澤さんは40歳)。自分の一番近い年の方でも50歳、その上は70歳前後。ですから、もっと若い仲間を増やしていきたいです。こんなにおいしい奥久慈しゃもを絶やさないように。そして、もっと皆さんに奥久慈しゃもを食べて欲しいです。」 伊澤さんは、県内のグルメイベントなどでは自ら奥久慈しゃもを焼き鳥にして販売し、精力的に知名度アップ活動をおこなっています。 奥久慈しゃもの名をどこかで目にしたら、ぜひ一度食べてそのおいしさを味わってみてください。
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