いばらきの食に挑戦する人たち
「農業×観光」の発信で、定年後の新しいビジネススタイルをご提案 小口 弘之(常陸大宮市)
ブルーベリーフレンドファーム
ブルーベリーフレンドファーム
カフェ店内
常陸大宮市の山間部にある「ブルーベリーフレンドファーム」は、大粒で甘酸っぱくジューシーなブルーベリーを、広さ1.2haの畑で約40種類(3,000本)栽培しています。農薬、化学肥料、除草剤不使用で育てる農園のブルーベリーは、「茨城県GAP(個人認証第一号)(※)」にも認証されています。 マスターソムリエでもある代表の小口弘之さんが「ヨーロッパのぶどう畑をイメージして作った」という農園を見下ろす景色は、まるで本当にヨーロッパに来たかのような美しい景観が広がります。 摘み取り体験のみならず、農園自体を観光の拠点にしてしまおうという「農業×観光」を実践し、カフェも併設したこの農園。山間部に位置し、しかも複雑で細い山道を辿らないとたどり着けない場所にあるにも関わらず、6月から8月の期間中、県内外から毎年約1,000人もの人々が訪れる人気の農園なのです。 (※)茨城県GAPとは…ひとにも環境にも優しい高品質な農業に取り組む農場に与えられる認証制度。
「6次産業化」は加工品作りだけじゃない
強剪定で4年間は実をつけさせず、強い木を育てる。
大粒のブルーベリー
小口さんは、水戸京成ホテルの総支配人として“食”に携わる仕事をしていくなかで「地元の農作物の素晴らしさ」に魅せられ、いつしか「定年後は農業をやりたい」と思うようになったそうです。かすみがうら市で国内トップクラスのブルーベリー生産を行う坂農園の坂 尚武氏の姿勢に感銘を受け、「おいしいブルーベリー=良い木造り」のために51歳の時に10年後(定年後)に農園をオープンする計画で、ブルーベリー栽培に着手しました。 ■いばらきの食に挑戦する人たち > 坂 尚武さんの記事はこちら https://www.ibaraki-shokusai.net/seisan/?id=455
大粒のブルーベリーがぎっしり入った人気商品「ブルーベリータルト」
この色を出せるまでに何年もかかったという「ブルーベリーパスタ」
ジャムではない。新商品「ブルーベリーあん・ソース」」
「スタートは実家の10aの土地で(現農園)、200本のブルーベリーを植えました。坂さんの教え通り、強剪定(多くの枝や芽を切り落とす剪定方法)で4年間は実をつけさせず、ひたすら丈夫な木作りに励みました」と小口さん。 紆余曲折ありながらも、10年かけて納得のいくブルーベリーを作りあげ、開園の3年前から名刺を作り、ホームページとFacebookを開設し、定年後の夢を語りながら開園の準備を着々と進めました。そして2015年、定年と同時にいよいよ「ブルーベリーフレンドファーム」をオープン。翌年には大粒のブルーベリーをたっぷり入れた「ブルーベリータルト」や「ブルーベーリーパスタ」などを提供するカフェをオープンしました。 「私は、『6次産業化(生産者が作り、加工し、販売するしくみ)』は、加工品作りだけじゃないと思うんです。収穫期以外にも収入を確保できるように、“ブルーベリー農園の四季”や“常陸大宮の自然”を感じられるカフェを建てました。防鳥ネットも、景観を損なうので付けていません。県北など過疎地域の小さな農業は、『観光』とセットで取り組んでいくことが今後の存続に向けてとても重要だと感じたからです。加工品作りも、白餡とブルーベリーを合せた『ブルーベリーあん・ソース』など、他に無い尖った商品を、小さなマーケットに向けて作っています。これら全体が、私の6次産業化への取り組みなんです。」 オープン1年目の来園数は400名、2年目からは1,000名を超える観光農園となったブルーベリーフレンドファーム。小口さんは、「多くが市外からのお客様。過疎地域で交流人口が1,000名を超えたことは、地域の活性化に繋がっていくのではないかと嬉しく感じています」と語ります。
「HIOKO(ひおこ)ホールディングス -高校生株式会社-」誕生
高校生株式会社「HIOKOホールディングス」の皆さんと小口さん。
農園の一画にある「高校生農園」
小口さんの独自の「6次産業化」の取り組みを聞いた、茨城県立常陸大宮高校の校長から「「木造り」=「人づくり」は同じこと。高校生に農業体験をさせたい」と申し出があり、生産から加工、営業、販売、財務までの『生きた商業』を学ぶ環境「高校生農園」を提供しました。2016年には、同校商業科の生徒たちが出資する持ち株会社「HIOKOホールディングス」をつくりました。これは、日本で初めての高校生の株式会社です。 「単にものを作るのが目的ではなく、市場調査を行い、セールスして、そのあとの財務まで自分たちで管理し、6次産業化全体をデザインすることで、これから地域に残り、地域で活躍する力を若い人たちにつけてもらい、自立できる人をつくることが大切だと考えています」と小口さん。 この取り組みは、業界で高い評価を受け、第45回毎日農業記録賞の一般部門「最優秀賞」を受賞しています。
簡単で新しい調理方法の提案
小口さんは、電子レンジ専用調理器「ベジ・シェフ」を使用した「新しい調理提案」を行い、「高齢化社会に向けた食の提案」と、「若者が野菜を食べる習慣づけ」の普及活動も行っています。 「ベジ・シェフが他の調理器と違うところは、『火を使わずに加圧蒸気調理』『減塩』『栄養成分を守る』ことができる点です」 「どんなにこだわって美味しい野菜を作っても、どのように調理されるのかが大切な要件になります。素晴らしい野菜でも、茹でたら栄養成分が流出してしまいます。このことに対し、『簡単で具体的な調理提案』を農業者側から行うことが、今後の野菜の消費拡大に繋がるのではないかと考えています」 小口さんは、この活動を13年間続けています。茨城県栄養士会、JAや生産者とのタイアップによるレシピ作成等も行い、農園やベジ・シェフを通して、「農業」と「観光」、「調理提案」を結びつけて自身の「食の集大成」として発信しています。 ■ベジ・シェフについてはこちら https://www.vege-chef.co.jp/
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