いばらきの食に挑戦する人たち
完熟にこだわる柿づくり 上田佳幸さん(石岡市)
完熟柿
茨城県のほぼ中央部、筑波山の東側に位置する石岡市(旧八郷地区)は、甘柿栽培の北限といわれ、皇室への献上の産地としても有名です。 上田佳幸さんは、現在約80名の会員からなる『八郷柿振興協議会』の会長を務め、農林水産大臣賞を受賞するなど、高品質の柿を作っています。また、上田さんの父・忠さんは、今からおよそ80年前にこの地域で初めて柿の木を植えたパイオニアの一人だそうです。 上田さんのこだわりは、ズバリ、完熟出荷。主に、西村、早秋、太秋、富有の4品種を作っていますが、全て完熟の状態で出荷します。ただ完熟といっても、柔らかくするのではなく、甘さ、歯ごたえがその品種にとってベストの状態になったところを見極めて収穫するのだそうです。特に中が色づく「西村」は、収穫後ひとつひとつに裏から光を当てて完熟しているかを確かめてから出荷するそうです。
剪定と土づくり
柿を生産するうえで最も重要となってくるのが、剪定。 「柿の枝は、桃や梨などと違って、枝に花芽があってもその枝に花がつくとは限りません。その花芽から次の枝を伸ばして花を咲かせ、結実することもあります。これを『結果母枝(けっかぼし)』というのですが、この結果母枝の見極めが非常に重要です。実がなる枝を切ってしまいかねないので、非常に気を使う工程ですね。」元気な結果枝(けっかし)を残せるような選定は、長年培ってきた目と経験がなければできない工程です。 また、毎年3月ごろに、主に醗酵鶏糞、油かす、骨粉などを自身でブレンドした有機質肥料を惜しげもなくどっさりと施すそうです。 「この作業を惜しむと、実のヘタの部分に穴があく『ヘタすき』の実になってしまうんです。柿はほどんど追肥は行いませんから、必要なときに十分に与えます。」
摘蕾(てきらい)、摘果
見た目よりも味を重視するという上田さんの柿作り。上田さんの場合、最終的に残す実は1枝に対して1個です。 「花が付いたら蕾のうちにそれを取る“摘蕾(てきらい)”という作業があります。柿の木は1枝に4~6個のつぼみが付きますが、これを2個くらい残して摘蕾していきます。最終的には1つの実を残すわけですが、この摘蕾が柿の良し悪しを決めるので、慎重に行いますね。」 おいしい柿を作るにはこの摘蕾の見極めがポイントとなるそうです。
皇室に献上する柿
八郷柿振興協議会の生産者が作る柿は、毎年皇室に献上されています。会員は、最高品質の柿を作るスペシャリストばかり。 「皇室に献上する柿は、毎年、協議会内で3Lサイズの富有柿を育てあげて、ブルーム(※)を消さないように手袋をして収穫します。その後、まず個人での選別、次に組合での選別、最後に協議会での選別を行い、残った24個を3ケース、桐箱に入れて献上します。 お客さんから『献上柿ください』と言われることもあるのですが、そもそも『献上柿はこれです。』というものは無いんです。」 と上田さんは言います。 (※)ブルーム…果物や野菜の果実における、果皮表面の白い粉状の蝋物質。 熟した新鮮な果実によく見られる物で、果実から自然に分泌されている天然物質
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富有(ふゆう)、早秋(そうしゅう)、太秋(たいしゅう)、西村早生(にしむらわせ)など、様々な種類がある柿。甘みが強く多汁で柔らかな富有、シャリ感があり芳醇な香りでとても甘い太秋など、甘み、固さ、香りはそれぞれ。 「現在は、“柿と言ったら富有”という方も多いのですが、太秋も人気が出てきています。時代はどんどん変化しているので、消費者のニーズに柔軟に答えられるよう、新品種もどんどん増やしていきたいです。」 上田さんは毎年新品種育成にも取り組んでいます。
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