いばらきの食に挑戦する人たち
うまい梨を届けたい! 野村孝尚さん(下妻市)
平成25年度 農林水産大臣賞を受賞した梨畑
茨城県の梨生産量は全国第2位。その茨城県内でも有数の生産量を誇る下妻市に、梨の研究者や県内外の梨生産者がこぞって見学にやってくるという梨畑があります。それが、野村孝尚さんの梨畑です。 野村さんが梨の生産を始めたのは今から約30年ほど前。当時野村さんのご実家は、米をメインに生産し、梨の生産はごくわずかでした。そんななか東京でサラリーマンをしていた野村さんが帰郷。農業を継ごうと決意し、「これからは梨だ。やるからには梨をやろう。」と梨畑の規模拡大を図りました。平成26年度現在、野村さんの梨畑は下妻市内に7箇所あります。合計1.8ヘクタールほどの広大な園地で、幸水・豊水・あきづき・茨城県オリジナル品種の恵水などを生産しています。
「一般の人が見たら、梨畑ってこんなものなのかと思うだろうけど、梨の生産者や専門家が野村さんの畑の梨を見ると皆唖然としますよ。どうしたらこんな風になるのかって。」と語るのは、長年下妻市の梨PRを行っている陰の立役者、JA常総ひかりの上野課長。野村さんの園地は、樹と樹の間隔がとても広い。これは作業しやすいようにと野村さんが考えて作ったものですが、ここまで樹を少なくすると、枝の管理に相当気を使わなければ、枝が折れたり落ちたりしてしまうそう。 そしてもっと驚くのが、間隔の広い梨の樹を見上げると、園の端から端までギッシリと、しかも均等な大きさの梨がたわわに実っていることです。 「どうしたらこうなるのかって、よく聞かれるんだけど、私も教えられるものなら教えてあげたい(笑)。特別なことはしていないんです。ただ、基本にのっとって、適期に適正な作業を行うということは常々心がけています。」と野村さん。 上野課長は言います。「例えば、幸水なら1つの実に対して葉の数は30枚ほど付いていれば良い梨がなるといわれています。野村さんは、これだけある梨の実1つ1つに適正な数の葉が付いているか、全部計算して作業しているんです。こういった細かいことが、わかっていてもなかなかできないのが普通。野村さんの性格なんでしょうね。」 こういった取組が評価され、野村さんの園地は、平成25年度に農林水産大臣賞を受賞しました。
スタッフがいるからこそ
野村さんの梨畑におじゃましたところ、その時期は「幸水」の収穫真っ最中。8月の炎天下の中、野村さんと奥様を含めた合計4名のスタッフで収穫を行っていました。なんでも、スタッフは20年以上、野村さんと共に梨の生産を行ってきた家族のような存在であるとか。 「梨は、一年を通して休む暇はありません。収穫が終わると、土づくり、剪定、授粉、摘果とずっと働いています。うちで働いてくれているスタッフは、もう20年以上一緒にやっているので、摘果や授粉のやり方をよくわかっていて、安心して任せられるんです。このスタッフがいるからこそ、こういう梨ができるのだと思います。」
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専門家や梨生産者がこぞって訪れ、ついには農林水産大臣賞も受賞した野村さんの梨畑。取材中も、なにか変ったことを行っているのでは、と質問を繰り返しましたが、野村さんは、「特別なことはしていないんだよ。」と笑顔で答えるばかりでした。上野課長は、「梨の実を見れば生産者の性格が分かる。」と言います。1つだけわかったことは、野村さんは徹底して"基本"を繰り返していること。もちろん、土づくりや肥料の配分などもありますが、樹1本、枝1本、実の1つ1つまでを正確に把握し、そこに対して適切な時期に、適切な作業を行っていく。それこそがこのような園地を作れる答えなのでは、と思います。 今後の展望を野村さんにお聞きしたところ、「うまい梨を届けたい。ただそれだけです。」と照れながら答えてくれました。
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