いばらきの食に挑戦する人たち
小松水産株式会社 小松 伸克(日立市)
新鮮でおいしい!「茨城のしらす」
親潮(寒流)と黒潮(暖流)が交わり、魚の餌となるプランクトンが多く発生する茨城沖は、しらすの好漁場で、全国有数の漁業生産量を誇ります。 多くのしらす産地では、一度に大量のしらすを獲るため、二艘の船で一つの網を引く「二艘曳き(にそうびき)」漁法が行われています。一方、茨城県では、一艘の船がしらすの群れの周りに網を入れ、巻きとる「一艘曳き(いっそうびき)」漁法が行われています。 「一艘曳き」は網を引く時間が短く、繊細なしらすを傷つけずに鮮度よく獲ることができる漁法です。 茨城の漁師が丁寧にしらすを扱っているからこそ、新鮮でおいしいしらすが食卓に届けられるのです。
業界初!ISO22000を取得!小松水産株式会社
茨城県日立市にある小松水産株式会社は、日立市久慈浜で水揚げされたしらす等を原料とした、干物などの水産加工品の製造販売を行っています。 小松水産では、しらす・干物業界で初めてISO22000という世界基準の食品安全マネジメントシステムを導入しました。本社工場から車で5分の場所にある久慈漁港等から仕入れた新鮮な生のしらすを釜茹でし、製品になるまでを一括して管理し把握できる仕組みを取り入れ、安全・安心な商品づくりを行っております。 日本にある本社製造工場のほかに、タイに自社工場と販売会社、ベトナムに販売会社とレストランも展開し、アジア、アメリカ、カナダ、オーストラリア等15か国への輸出も行っています。 地元では「こまつのしらす」として広く名前が知られるほどしらすの加工技術に優れ、「新鮮・美味しい・安心」にこだわった商品を製造しています。
農林水産大臣賞受賞!「本気のしらす」
小松水産株式会社 石橋 実樹さん
農林水産大臣賞受賞「本気のしらす」
茨城県内の水産製品から優秀な製品を選定する「茨城県水産製品品評会」。令和4年度に最高賞の「農林水産大臣賞(沿海部門)」を受賞したのは、小松水産の「本気のしらす」でした。 「本気のしらす」の開発秘話を、小松社長と営業部長の石橋さんにお伺いしました。 石橋さん 「『本気のしらす』は、コロナ禍によってできた商品なんです。営業にも出られず、今までと同じやり方をしては生き残れないと、社長と私でマーケティングのオンライン講座を受講しました。 見えてきたのは、これまでは“良いものを作っているんだから売れて当たり前”と、メーカー目線による営業スタイルをしてきたことでした。 そこで、“お客様が本当に望んでいることは何か”を知るために、お客様アンケートやネットアンケート、弊社のパートさんたちにもヒアリングをしました。そこで分かったことは、多くの消費者は“しらすを購入する時に、メーカーで選んでいるわけではなく、最寄のスーパー等で売っているしらすを買っている”ということでした。また、“子どもに最初に食べさせる魚にしらすを選ぶ人が多い”ため、“安全性”がとても重要視されていることも分かりました。 弊社ではISO22000を取得し、業界内では認知されていますが、お客様には全く認知されていませんでした。そこで、“こまつのしらすは他と何が違うのか”をお客様に伝え、PRしていく商品として開発を始めたのが『本気のしらす』です」 小松社長 「消費者の方へのヒアリングでは、“おいしさ重視”はもちろん、“無添加のものを選びたい”、“しらすは賞味期限が短い”という声を多くいただきました。うちならできる。そう思い、“無添加”で“賞味期限を延ばす”商品の開発に着手しました。 真空殺菌機によって無添加の商品を作ることは可能ですが、賞味期限を延ばすとなると真空殺菌機の設計から変える必要があると分かりました。結局、機械の設計から携わり、3~4年かかってようやくそれらを叶えることができました」
試行錯誤の末、賞味期限を2日から4日に延ばすことに成功した「本気のしらす」。「微々たるものではありますが、これでも消費者には“早く食べきらなきゃいけない”といったプレッシャーが少しは減ると思います」と小松社長。 石橋さん 「『本気のしらす』は生のしらすから加工・パッキングまで一貫して行っています。久慈漁港、大洗港から生のしらすを仕入れ、いつ誰が獲って、社内の誰が加工しているか、全て小松水産で把握しています。これが実現できるのも、誰がいつ獲ったかが分かる“一艘曳き”によるものが大きいです。全て見えていた方が『本気のしらす』のコンセプトに合っていると思ったんです。また、しらすは小さい方が味のバラつきが無いため『本気のしらす』にはあえて小さいしらすを選んでいます」 おいしさ、安全性、全てにおいて“本気じゃないと作れない”ことから「本気のしらす」と名付けられたこの商品。 パッケージはデザイナーとディスカッションを重ね、小松水産の本気を示すインパクトのあるデザインになっています。 「本気のしらす」をいただいてみると、ふわふわした食感でしらすの甘みが口いっぱいに広がり、苦味やエグみが一切ありません。喉を通ってからもしらすの甘みと優しい香りが続く、感動的なおいしさでした。 小松社長に、農林水産大臣賞受賞の感想をお聞きすると、「ありがたい限りです。実力のある商品であることは自負していましたが、第三者の評価を受けて改めてそれ相応の商品だと感じています」とのこと。 また、現在はプラスチックのパッケージを使用していますが、将来的には環境にやさしい紙やリサイクル素材の使用を検討しているそうです。
しらすアレンジレシピ
にんにくとオリーブオイルとの相性がとても良いしらす。にんにくとオリーブオイルに漬けておくだけで、1週間程度日持ちするそうです。 おすすめのレシピを教えていただきました。 ≪しらすのオイル漬け≫ ■材料 ・釜揚げしらす…100g~200g ・オリーブオイル…100ml~120ml ・にんにく…ひとかけ ・鷹の爪…1本 ■作り方 ①にんにくを薄切りにして、鷹の爪の種を取る。 ②オリーブオイルとにんにく、鷹の爪を火にかける。 ③煮沸殺菌したビンにしらすを入れ、②を上からかけ入れる。 ④30分~1時間置いたらできあがり♪ オイル漬けは、そのままサラダやクラッカーにのせたり、しらすトースト、アンチョビと絡めてパスタ、混ぜ込んで焼きおにぎり、バゲットにトマトとともにのせるだけのカプレーゼなど様々なアレンジができます。ぜひお試しください。
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小松社長と石橋さんに、今後の展望をお伺いしました。 小松社長 「食を通じて、内側(健康)から人を元気にすることで、地元茨城はもちろんのこと、アジア、地球レベルで暮らしを豊かにしたいと考えています。また、良いものがあるのに活かせていない地域が沢山あります。世界で生き残っていくためには、日本の管理の良さや繊細さを活かすべきです。 弊社では、タイの現地工場など自社の海外拠点を持ち、現地の運搬、決済等、全て自社調達で行っています。2008年からは、水産物だけでなく、常陸牛や果物、菓子類などの茨城県産品の輸出も行っています。輸出は、ただ商品を持って行っただけでは売れません。輸出先の国の風土や食文化を勉強しなければなりませんし、書類上や業者間の手続きも多く、複雑です。弊社が培ってきたノウハウやルートを活用し、茨城県産品の輸出のサポートをしていきたいと思っています」 石橋さん 「地域貢献と食育に力を入れていきたいです。先のヒアリングで、地元日立市の方々でもしらす干しがどのように作られているかを知らない人が多いことが分かりました。そこで、イベント等で特に子供たちに対して、カニやタコなど他の魚が混じっている選別前のしらすを持っていき、観察する『ちりめんモンスターをさがせ!』という体験学習を行ったり、日立市の協力で、市内の小学5年生を対象に『しらすがどのように作られているか』という授業を行わせてもらったりしています。 ちりめんモンスターで混じった様々な種類の小魚から、環境について考えるきっかけになればと思いますし、授業を通じて商品ひとつに沢山の人が関わっていて、皆が誰かに喜んでほしいと思っている、人と人とのつながりがあること伝えられる存在になりたいと思っています」 千葉県や埼玉県など他県からも声がかかり、年間約30講演をこなしているという石橋さん。 「食育スクール&プロジェクト IBARAKI HOLIC-いばらきほりっく- 」で行ったイベントでは、子供たちが見つけたちりめんモンスターを描き、それを小松水産の看板商品「久慈浜しらす」のパッケージに「ボクらのおいしい!久慈浜しらす」として反映し、それを子供たち自らがイオン(高萩店)で販売もしたそうです。 石橋さんは、こうした、“メーカーだからこそできる”食育活動や、新しいことにどんどん挑戦していきたいと語ってくれました。
インフォメーション | |
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名称 | 小松水産株式会社 |
住所 | 茨城県日立市留町1045-2 |
お問い合わせ |
TEL: 0294-52-5501
FAX: 0294-52-5509 |
WEBサイトURL | https://www.shirasu.com/ |
その他の情報 | ※このページの情報は、2023年1月時点のものです。 |
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