いばらきの食に挑戦する人たち
女化ブルーベリーの森 本多 恭子さん(牛久市)
いばらきのブルーベリー
甘酸っぱく、自然のうまみがギュッと詰まったブルーベリー。 茨城県で生産されるブルーベリーは、6月上旬から8月下旬ごろまでが最盛期となっており、かすみがうら市、つくば市、石岡市を中心に摘み取り農園が多くあります。 ブルーベリーには多くの品種があり、「ハイブッシュ系」と「ラビットアイ系」に大別されます。県内各地では様々な品種が栽培され、それぞれ大きさや甘さ、風味、酸味に違いがあり、バラエティーに富んだ味が楽しめます。生で食べるのはもちろん、ジャムやスムージーなどにしてもおいしくいただけます。
女化ブルーベリーの森
「女化(おなばけ)ブルーベリーの森」は、茨城県牛久市の小さな森に囲まれた観光ブルーベリー農園です。 広さ3000坪の農園には約800本14種類のブルーベリーがあり、毎年6月上旬~8月中旬頃までブルーベリー狩りを楽しむことができます。 代表の本多 恭子さんは、2011年に埼玉県から移住し、2013年に「女化ブルーベリーの森」をオープンしました。 「私の叔母が趣味でブルーベリー農園をやっているんです。その暮らしに昔から憧れていて、父の定年退職を期に、父と母と観光農園をやりながら東京に務める夫の通勤圏内で暮らせる土地を探していました。そうしたら叔母が紹介してくれたブルーベリーの苗屋さんが『ブルーベリーの苗800本を植えたばかりだが農家さんの都合で育てられなくなってしまった土地があるが、そこはどうか』と声をかけてもらいました。小さな森に囲まれたこの土地が気に入り、農業の経験はありませんでしたが、叔母の姿を見てブルーベリーならできそうかなと思っていたので、家族皆で移住してきました」 ブルーベリーは最低3年は実を付けないため、移住後最初の3年間は農業の勉強をしながらブルーベリーを育て、観光農園オープンに向けた準備に励んだそうです。 「農業の知識が無かったので、まるきりゼロからのスタートでした」と本多さん。「自然なままのおいしさにこだわりたい」と、有機を主体にした肥料を与え、無農薬で除草剤を使用せず、虫は手作業で取り、800本の樹の選定も丁寧に行うなど大切にブルーベリーを育てました。樹元には防草、保湿、根張りを助けるウッドチップを積み上げ、3年後、満を持して「女化ブルーベリーの森」をオープンしました。
「でもお客さんは毎日ほぼゼロ。新聞折込を入れたり、地域のマルシェなどにも出店しましたが反応は薄かった」と言います。 悩んだ本多さんは、「とにかく自分の顔と名前を知ってもらおう」と、元々人と繋がることが好きだったこともあり、毎日Facebookにブルーベリーに関すること、そうでないプライベートなこと、女化ブルーベリーの森の環境など、身の回りのことをひたすら投稿したそうです。 すると、ぽつぽつとお客さんが来てくれるようになり、Instagram、LINE公式も合わせて投稿するようになると、ファミリー層の来客が増えました。現在では、時期になると毎年楽しみに来てくれるお客さんが沢山訪れるようになりました。 本多さんは、ブルーベリーを樹の上で“完熟”させることにもこだわり、実のおしりが黒に近い濃い紫色になると“完熟”した証拠なのだそう。完熟したブルーベリーは、味が濃く、ブルーベリー本来のおいしさが味わえると言います。
食育活動表彰で「農林水産大臣賞」を受賞!
夢だった観光農園を実現した本多さん。毎年楽しみに来てくれるお客さんの顔を見られること、子供たちがおいしそうにブルーベリーをほおばる姿など、お客さんの反応がダイレクトに見られることがこの仕事の醍醐味だと言います。「おいしそうな笑顔はたまりません。しんどいこともあるけど、やってて良かったなって思います。無知識だからここまで突っ走れた。知識があったら怖くてできなかったかもしれない」と笑います。 人脈も増え、農林水産省農業女子プロジェクトメンバーにもなりました。近隣農家で意気投合した横田農場の横田祥さん、元ねぎ農家の井堀実香さんと3人で、農業の楽しさを未来に伝える「AGRI BATON PROJECT(アグリバトンプロジェクト)」を立ち上げ、農業の楽しさを伝える絵本も作りました。 「3人で集まっていたある時に、茨城の子供たちの『なりたい職業ランキング』に農業が入っていないことが悲しいよねという話になって。こんなに面白い仕事なのにねって。それで横田さんが、『絵本を作ってみようか』と。アグリバトンプロジェクトを立ち上げたら、メンバーが80名くらい集まってくれました。企画書を作り、クラウドファンディングをしたら200万円も賛同いただいて。元々知人だったイラストレーターの小林由季さんにかわいい絵を描いていただいて、『おいしいまほうのたび あさごはんのたね』という絵本を自費出版で出しました」 絵本は予想以上に売れ、増刷もかかりました。また、この取組みは農水省にも伝わり、第7回食育活動表彰の農林水産業者等の部で「農林水産大臣賞」を受賞しました。 絵本の第2弾「よるごはん編」もクラウドファンディングで300万円が集まり、現在制作中だそうです。
1 月 | 2 月 | 3 月 |
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本多さんは、自社のブルーベリーを使ったジャムやジェラートなどの加工品も販売していますが、今のところ製造は外部に委託しています。「以前のイベントで、自分好みのスパイスを入れたブルーベリージャムを作って出したら大好評で。今後は加工場を作り、加工品も自分で作ったものを売るのが野望です。そしてゆくゆくは、摘み取りだけでなく、来てくれたお客さんがゆっくりとくつろげるような“農園カフェ”をやりたいと思っています」 本多さんは現在、阿見町に第2農園を作り、ブルーベリーの苗を200本植えたそうです。 摘み取り、食育、加工品、カフェ。夢が尽きない本多さんの挑戦は、まだまだ続きます。
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