いばらきの食に挑戦する人たち
株式会社ドリームファーム 佐藤 治彦さん(常総市)
茨城を代表する銘柄和牛の「常陸牛」
茨城県の銘柄牛「常陸牛」
茨城県が誇る銘柄和牛「常陸牛(ひたちぎゅう)」は、指定生産者が丹念に育てた黒毛和牛のうち食肉取引規格A、Bの4と5等級に格付けされた、きめ細かく柔らかで、風味豊かな霜降り肉です。 生産を開始して以降、肉質の良さが評価され、右肩上がりに出荷頭数が増え、令和2年から毎年1万頭を出荷し、茨城県内や首都圏を中心に販売しています。 また、「常陸牛」は、北米や東南アジアへの輸出も行っており、その肉質は日本国内のみならず、海外でも高い評価を得ています。 なお、「常陸牛」の更なるブランド力強化のため、“オレイン酸と小ザシ”に着目した全国初の基準で厳選した新ブランド「常陸牛 煌(きらめき)」を打ち出し、「常陸⽜」のトップブランド化と知名度向上、国内外への更なる販路拡⼤を⽬指しています。
株式会社ドリームファーム
茨城県常総市にある「株式会社ドリームファーム」は、繁殖雌牛の育成から種付け、分娩した子牛を哺育する繁殖経営に加え、子牛を肥育して出荷する肥育経営まで一貫して行う「和牛繁殖肥育一貫経営」に取り組む常陸牛生産者です。 およそ80haという広大な農地で、母牛の放牧と、牧草や飼料用稲などを自社で栽培し、収穫した飼料を牛に与える「循環型農業」を実践しています。 ドリームファームのこれらの取組みは国からも高く評価され、2014年(平成26年)には「第53回 農林水産祭 畜産部門」において、「天皇杯」を受賞しています。 社長の佐藤 治彦(はるひこ)さんは、ドリームファームを立ち上げた佐藤 宏弥(ひろや)さんの長男で、現在は治彦さん夫妻が経営を継ぎ、宏弥さん夫妻と治彦さん夫妻の4人と親戚1人の5人で農場を営んでいます。
ストレスをかけない環境で牛を育てる
佐藤さんが牛を育てるうえで一番大切にしていることは、「ストレスをかけない」こと。 「母牛を放牧することで、母牛だけでなくお腹にいる赤ちゃん牛にもストレスがかからず、丈夫な子牛が産まれます。丈夫な子牛だと、元気に育ってくれるんです。放牧を終えた母牛は、見違えるほどの良いコンディションになっています」と佐藤さん。さらに、肥育牛舎では牛を4頭ずつ“群”で飼育し、出荷するまでその“群”は変えないのだとか。 「草食動物である牛は、2頭以上集まると必ずボスを1頭決めます。牛の入れ替えをするとその都度ボスを決めるための喧嘩になり、ストレスがかかりますし、角で肉(身体)を傷つけ合ってしまう。それを防ぐために、生まれた時からずっと同じ群で過ごさせています」 肥育牛舎では、なんとも気持ちよさそうに寝ている肥育牛の姿がありました。 「牛がリラックスして寝ているか確認するのも、実はとても重要なのです。寝ているということは、餌が足りて満足している証拠です。満足している牛は、自分が近くに行っても餌を欲しがらず、寝ています。牛の状態を確認するのは基本的な事ですが、とても大事なことです」
循環型農業の強み
ドリームファームの一番の特長、そして強みが「循環型農業」による飼料自給率の高さです。およそ80haという広大な農地に、牛の糞などを発酵させた良質な堆肥を入れて土作りを行い、稲わらや牧草を作り、牛の飼料や寝床として使用しています。 平均4日に1頭のペースで子牛が産まれ、生後3か月間は栄養分を安定的に補給するため、粉ミルクを飲ませ、10か月目までは体と胃腸を作る「育成期」。そこから30か月目までは「肥育期」となります。佐藤さんは、適切な時期に適切な飼料を与えることが、おいしい肉になる条件だと言います。 「特に『育成期』に与える飼料は重要です。配合飼料を少なくして、イタリアンライグラスサイレージを中心に与えることで、肥育期に入った時にしっかりと食べられる胃袋を作ります」 土→草→牛→ふん尿(堆肥)→土と、自社内で循環型農業を見事に実践しているドリームファーム。驚くことに、畑仕事はほとんど治彦さんと宏弥さんの2人で行っているそうです。 「常陸牛」の格付けについては、「歩留等級はA、B、Cの3区分あり、皮下脂肪が少なく、肉が多いものがA、皮下脂肪が多く肉が少ないとCになります。この皮下脂肪というのは、肉に入るサシ(霜降り)のことではなく、脂肪のことを指します。(肉質等級は脂肪の入り具合や肉色など4項目で判定し、5段階で評価され、最も優れているのが5等級となります)歩留等級B等級以上かつ肉質等級4等級以上に格付けされたものだけが、『常陸牛』に認定されます」 ドリームファームから出荷する年間約60頭の和牛ほぼ全てが「常陸牛」と認定されています。
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佐藤さんに、今後の展望を伺いました。 「自分たちが行っていることは、畜産業でありながら農業なんです。堆肥を作り、土を作り、草を作り、それを牛に与える。よくできれば高値で売れるし、よくできなければ安値になってしまう。自分の仕事が全部自分に返ってくるという面白みがあります。この仕事を、次の世代に繋ぎたい。自分は『つなぎ』のような役割だと思っていて、この仕事の魅力を子供たちに伝えたいし、そういう仕事にしたいと思っています」 佐藤さんの挑戦は続きます。
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