いばらきの食に挑戦する人たち
小沼水産株式会社 小沼 和幸さん(かすみがうら市)
霞ヶ浦と共に歩んできた120年の歴史
全国2位の湖面積を誇る霞ヶ浦は、古くから豊かな漁場として漁業が営まれてきました。霞ヶ浦大橋のたもとにほど近い湖岸に構える小沼水産は、120年続く老舗加工メーカーです。明治37年に「マルダイ」という屋号で創業し、佃煮を中心に製造。「創業当初は、ワカサギ、カワエビ、シラウオやアミ、ハゼなど霞ヶ浦で獲れたものを加工していました。地元の漁師さんに依頼して、一緒に商品を作ってきました」と、代表の小沼和幸さん。 時の流れとともに変わる消費者のニーズに合わせた味・商品を開発してきた同社は20種を超える幅広い商品をラインナップしています。看板に掲げる主力商品は淡水魚で、カワエビ、ワカサギ、シラウオが三本柱です。霞ヶ浦で水揚げされたものに加え、これまでの歴史で培った目利きで他の地域産の素材を買い付けて加工していますが、その背景には、近年顕著な気候変動による内水面への影響が大きいといいます。 「以前は霞ヶ浦といえばワカサギが豊富に獲れていたんですが、ここ数年は夏の厳しい暑さの影響で全然獲れません。暑すぎて、湖の水温も30度超えてしまうので…」と小沼社長。 そんな中でも、美味しい商品を消費者に届けたいと探究を続けています。
保存食としての佃煮からお惣菜へ
小沼水産の商品の特徴について、「お客さんの要望を聞きながら作っている」と小沼社長は話します。 「佃煮は、元々は日持ちを重視した保存食として作られていました。ですが保存技術がとても優れている今の時代においては、保存食からお惣菜としての感覚にシフトしています。なので、薄味とか甘さ控えめのものがほしいといったリクエストが多いですね。また、健康を意識した味にもなってきています。昔に比べると塩分もかなり下がっています」と小沼社長。他にも、「食べやすい食感」も重視しているといいます。 そんな小沼水産の商品は消費者のみならず専門家からも高い評価を受けており、これまでに農林水産大臣賞や水産庁長官賞など数々の賞を獲得してきました。令和5年度茨城県水産製品品評会でも、「小えび甘露煮」が最高位の農林水産大臣賞を受賞しました。 「カワエビを鮮度が良いうちに生から炊き上げて、甘さ控え目の甘露煮に仕上げています。作り方は本当にシンプルで、主に砂糖と醤油と水飴で余計な添加物などは入れず、オーソドックスにカワエビの美味しさを生かした味を目指しています。殻のシャリシャリした食感、歯ざわりもポイント。ご飯との相性は抜群です」 艶々とし煌めく紅色が目を引く小えび甘露煮。透明感のある美しい色を出すには「とにかく鮮度が重要」と小沼社長。霞ヶ浦で水揚げしたらすぐ、できるだけその日の午前中に炊き上げてしまうのだとか。ここでしか作れない、他では真似することができない一品です。
霞ヶ浦の新鮮な美味しさを味わってほしい
また、不漁に悩むワカサギに代わる主力として期待されているのがシラウオ。霞ヶ浦では夏から12月までと長い期間で水揚げされます。夏は3センチほどですが、冬になるにつれ成長しピークを迎える12月には5~6センチほどに。ちょうど取材に伺った日にもシラウオの水揚げがあり、生炊きにするところを見せていただきました。 朝、霞ヶ浦から揚がったばかりのシラウオは透明できらきらと輝いており、「霞ヶ浦のダイヤモンド」と言われるのも納得。小えび同様に素材の風味を生かすシンプルな味つけで、生のまま炊き上げます。 炊き時間は約30分。 「高めの火力で一気に炊き上げていきます。そうすることで鮮度の良いままパリッと仕上げることができるんです」。 あっという間に炊き上がったシラウオは、透明感のある美しい黄金色です。この色も重要なポイント。「佃煮というと、どうしてもみんな黒っぽいイメージがありますよね。そうではなく、見た目から鮮度の良さを感じてもらえるような仕上がりになっています」と小沼社長。 霞ヶ浦の美味しさを味わってもらいたいという同社の想いが詰まった味わいです。
1 月 | 2 月 | 3 月 | 4 月 | 5 月 | 6 月 | 7 月 | 8 月 | 9 月 | 10 月 | 11 月 | 12 月 |
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常に移ろうニーズや嗜好を取り入れつつ、長年のリピーターの期待にも応えられるようバランスを取りながら商品を開発しているという小沼社長。製造方法や味づくりの骨子など、これまでの伝統を守りつつも、様々な変化に柔軟に適応していきたいと語ります。 「新しいものへのアンテナは常に高く持っています。弊社が有する淡水魚や加工の知識を生かしながら、新たな可能性を追究していきます。現在、定番だけで約20種の商品があり、その半分以上は淡水魚。これまでの固定観念に捉われず、ラインナップに加えられるものがないか模索していきたいですね。また、カワエビやシラウオは他では真似しづらい霞ヶ浦の貴重な資源。付加価値をつけて販売していきたいです」 また、販路拡大も今後の目標と小沼社長。現在は東日本エリアが中心ですが、日本国内へ販売を広げ、より多くの人に小沼水産の味に親しんでもらいたいと話します。
インフォメーション | |
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名称 | 小沼水産株式会社 |
住所 | 茨城県かすみがうら市田伏470-2 |
お問い合わせ |
TEL: 029-896-1111
FAX: 029-896-1120 |
WEBサイトURL | http://www.onumasuisan.co.jp/ |
その他の情報 | ※このページの情報は、2024年12月時点のものです。 |
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