いばらきの食に挑戦する人たち
常陸国天然まがも 茨城県猟友会美野里支部長 根岸 泉さん(小美玉市)
「常陸国天然まがも」を支える立役者
マガモ
常陸国天然まがも
冬を迎える時期になると、ハクチョウやガン、カモなど多くの鳥が食べ物を求めて、シベリア等から南へ向けて旅立ち、暖かい日本にやってきて各地の水辺で冬を越します。そのため、霞ヶ浦など豊かな湖沼を有する茨城県は、古来より全国有数の渡り鳥飛来地となっています。 そんな渡り鳥の中には農作物を食害するものもあり、本県が生産量全国一位を誇るレンコンも甚大な被害を受けています。特に「カモ」によるレンコンの食害は深刻で、令和5年度の被害額は約1億4千7百万円にものぼっています。 一方で、マガモはフレンチやイタリアン、日本料理などを中心に使用されている高級食材でもあります。 そこで、茨城県では2023年より、マガモによる農作物被害対策と、新たに特産品としての利活用の両立を目指す取り組みをはじめました。 伝統的な網猟で捕獲したマガモを「常陸国天然まがも」と名付けてブランド化と、狩猟者、食肉処理施設、飲食店の連携により、「常陸国天然まがも」を使った様々なメニューを提供しており、好評を得ています。 常陸国天然まがもについて詳しくはこちらから https://www.ibaraki-shokusai.net/season/magamo
天然まがもを捕獲するベテランハンター
捕獲用の池に餌を撒く
小屋の中から様子を窺う
常陸国天然まがもの猟は、茨城県猟友会の9支部で行われています。その中のひとつである、小美玉市の美野里支部長・根岸さんにお話を伺いました。 根岸さんは猟歴30年超のベテランハンター。狩猟免許は大きく分けて「銃(第一種・第二種)、わな、網」の3種類あり、根岸さんは銃・わな・網すべての猟を行うことができます。 「最初は銃猟から入って、わな、そして、網を取得して2024年から常陸国天然まがもの猟をはじめました。元々自衛隊に勤務していて、射撃の腕には自信がありました。これまではイノシシやエゾシカとか、大物もたくさん獲ってきましたよ。銃とは違って網は網で難しいですし、やりがいがありますね」と根岸さん。 マガモの猟は、鳥獣保護管理法施行規則で定められた期間である11月15日~翌年2月15日までの間に行います。捕獲する「むそう網」という手法は、捕獲用の池に数日間毎日エサを撒いておきマガモを餌付けし、おびき寄せた後に一気に網で捕獲するというもの。 「マガモは雑食なのですが、特にレンコンが大好物なのでレンコンを細かく砕いて池に撒きます。数日間かけて、ここに美味しいエサがあるよとカモに覚えさせるんです。餌場を見つけたカモは仲間を呼んでくるので、夜に集まってくるのをじいっと待って、頃合いを見て今だ!と網をかけます。暗い中、双眼鏡で見ながら、羽音とかも聞いて…一発勝負なので、そのタイミングが難しいです」。 ひと月に三回ほど、シーズン内でも限られたチャンスしかないマガモ猟。ハンター達の腕が支えています。
さらなる展開にも期待がかかる
むそう網猟の実演
むそう網猟のイメージ
根岸さんの協力を得て、実際にマガモ猟を行う現場を見せていただくことができました。山あいに作られた捕獲用の池は、休耕田を利用して根岸さんら猟友会が設置したもの。「元々、カモが良く来る谷津田だったんですよ」と根岸さん。池の横にはカモを捕らえるための大きな網が伏せられており、少し離れたところに設置された小屋の中から、ワイヤー仕掛けで網を操作する仕組みです。 取材の日はちょうど2024年シーズンの2回目の猟が行われた翌朝で、小美玉市内の猟友会の仲間と一緒に、網にかかったマガモの出荷作業を行っているところでした。 今回、網にかかったのは29羽のマガモ。これまでで一番多いときは70羽を超えたこともあるといいます。猟友会によって獲らえられたマガモは高萩市の食肉処理施設に運ばれた後に各飲食店へ卸されます。 「野犬やアライグマ等が集まってきたカモを狙ってやってくることもあるので、邪魔されないように対策したり、草刈りをしたりとシーズンオフの手入れも大事ですし、大変なところはいろいろあります。でも、網で獲るのはマガモに傷も付かないし、食べるにも安心ですからすごく良いと思います。プロの手で料理されたマガモは泥臭さもなくてすごく美味しいですよ」と、根岸さんも「常陸国天然まがも」に期待を寄せます。
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「むそう網でのマガモ猟はまだ経験が浅く難しいところもありますが、面白い」と話す根岸さん。網をかけるタイミングの見極めなど、これから更に技術を磨いていきたいと意気込みます。 また、県内では常陸国天然まがもの取り組みが話題を呼び、網猟の狩猟免許取得者も増加しているといいます。実際に、根岸さんの所属する猟友会でも増えているとか。茨城県では、今後も常陸国天然まがもの捕獲者拡大とブランドのPRに努めていきます。
インフォメーション | |
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名称 | 茨城県農林水産部農地局農村計画課 |
住所 | 茨城県水戸市笠原町978番6 |
お問い合わせ |
TEL: 029-301-4264
FAX: |
その他の情報 | ※このページの情報は、2024年12月時点のものです。 |
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