いばらきの食に挑戦する人たち
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松崎養鶏場 松﨑 泰弘さん(石岡市)
鶏たちが元気に走り回る平飼い飼育
モミ殻と混ざり天然分解された鶏糞はサラサラしています
鶏が止まり木から巣箱へ簡単に行き来できる設計
石岡市は県内でも養鶏業が盛んな地域。その地で3代にわたり続く松崎養鶏場のオーナー・松﨑 泰弘さんは平飼いにこだわり、のびのび育った鶏が産む新鮮で安心・安全な卵を届けています。先代は自宅から離れた場所でケージ飼いを行っていたそうですが、松﨑さんは「鶏を常に見守り、健やかに育てたい」という思いから自宅敷地内に鶏舎を移設。平飼いへと転換しました。鶏の健康と卵の質を第一に考えて飼育できるようになり、その環境づくりが濃厚で臭みのない卵づくりに繋がっています。 鶏舎には鶏の環境を考えた手づくりの工夫が至る所に施されています。まずは1部屋を3つに区切る構造。鶏には餌や縄張りを巡って優劣を決める行動や、ストレスが原因で起こる「突き合い」という習性があります。そこで、相性の悪い鶏は別々の部屋に隔離。「突き合い」を抑制します。また、ひと部屋あたりの鶏の数を減らしてスペースを確保することで、ストレスを抑えるよう工夫しています。さらに床の敷料にモミ殻を使うことで鶏糞を微生物の力を使って天然分解。悪臭を軽減することで卵に鶏糞の臭いが移ることを防いでいます。卵を産む巣箱にも特別な工夫があり、高いところで寝る習性のある鶏のため止まり木を設置し、この習性を活かして止まり木の先から巣箱に入れるようにしています。このひと手間が鶏の産卵を促進するのだと言います。また、松﨑さんは1日4回鶏舎の中に入り、手作業で採卵しながら鶏の健康状態を確認。「飼育環境が良く愛情をかけて育てると、のびのびと育ち卵の質も自然と良くなるのです」と語ります。
食の未来に繋がる国産飼料化
鶏たちの美味しい卵は、ここから生まれます
巣箱から出た卵は触れるとさらっとしていて綺麗
現在、松﨑さんが最も力を入れて取り組んでいるのが“国産飼料の活用”です。私達の毎日の食卓に欠かせない卵ですが、そのほとんどが輸入飼料で育てられています。卵は約98%が国内で生産されているにも関わらず、その飼料の国産シェアはわずか13%。もし海外の輸送が止まってしまったら私たちの食卓から卵が消えてしまうかもしれません。 松崎さんはそんな状況を変えようと立ち上がり、2018年頃から自社で使う飼料を国産化することに挑戦しています。きっかけは2011年の東日本大震災。海外からの輸入飼料が届かず苦労した経験から。「やはり餌も日本で作らなければ」と強く感じたそうです。もちろん国産飼料の道は簡単ではありません。原料を育てる農家が少ないためコストが高く、生産者もなかなか増えないのが現状です。松﨑さんは「買う人が増えれば自然とコストも下がり、生産者も増えていきます」と前向きに話します。そんな松﨑さんの動きを後押しするように、水田でトウモロコシや麦、大豆などを育てる農家を支援する制度が開始。国産飼料の輪が少しずつ広がり始めています。松崎さんは「水田でトウモロコシを育てて粒だけを収穫し、茎や葉を田んぼに残して緑肥にすることで肥料を減らせます。その後に大豆を作ると、通常の1.5倍の収量になることもあるんです」と言います。 国産飼料の卵を選ぶことは単に美味しい卵を食べるだけではありません。飼料の輸送にかかる二酸化炭素削減といった環境問題にも取り組む活動であり、次世代へつながるサステイナブルな食卓を支える確かな行動でもあるのです。その取り組みが評価され、環境問題や社会貢献に対して意識の高い大手宅配サービスでも松﨑さんの卵が採用されています。
国産飼料へのこだわり
松﨑さんの鶏は全て赤玉のボリスブラウン
このようにして毎日ひとつひとつ採卵します
そんな松﨑さんの使う飼料は約90%が茨城県産。その中でも主原料には地元・筑西市の耕種農家が育てたトウモロコシや、石岡市産の大豆を使用。カルシウムは日立市産のかんすい石を少量、夏場はスタミナ向上のために自家製生ニンニクを少量入れているといいます。季節に合わせて配合も調節することで、鶏の栄養状態や餌の質によって卵の甘みや匂いまでコントロールしているのだとか。国産飼料と輸入飼料のデータを比較・分析し、より安全で美味しい卵づくりのために日々研究を続けています。 しかし、国産飼料化だけにこだわっていては安定した出荷ができません。そこで松﨑さんは飼料を与えるタイミングにもひと工夫。鶏が卵を産む時間帯は夏場は朝9時までに約7割のみ。それは夏バテによる産卵周期の乱れにあるといいます。一方、冬場は全て午後2時頃までに産み終えます。そのため早朝どのタイミングで餌を与えるかによって1日に採れる卵の数が大きく変わるのだそうです。 そんな松﨑さんの様々な工夫と熱意によって国産飼料を与えられ大切に育てられた松崎養鶏場の鶏が産んだ卵は一般の卵よりも濃厚で臭みがなく、ほんのりとした甘みがあります。もちろん卵独特の後味の臭みも感じません。まずはシンプルに玉子かけご飯がおすすめ。石岡市にある「ゆりの郷」では、松崎養鶏場の卵を使った『特上たまごかけごはん』を提供しています。さらに、別の卵を使った玉子かけご飯との食べ比べセットもあり、ひと口で卵の違いがわかる圧倒的な美味しさです。 松崎養鶏場の卵は主に宅配サービス会社へ出荷されます。週末にはJAやさと・ひたち野の直売所に出荷されることも。地域でも信頼される品質として高いリピート率を誇ります。子供たちの食育にも繋がる松崎養鶏場の卵。ぜひ一度手に取ってみたい逸品です。
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国産飼料の拡大には、自然災害による作物不足や農家の高齢化など多くの壁があります。松﨑さんは台風や豪雨に備え、安定して国産飼料を供給できるように生産地を全国に分散しています。さらに、若い世代へとバトンを繋ぐため講演活動も積極的に行い、安心・安全な卵を作る仲間を増やす活動を続けています。「飼料を作る生産者がもっと増えれば、消費者の皆さんに安定して美味しい卵を届けられます。これからも仲間と協力して未来へつながる養鶏を続けていきたいです。」 そう語る松﨑さんの挑戦は、まだ始まったばかり。小さな一歩の積み重ねが、日本の食の未来を守る大きな力になっています。
| インフォメーション | |
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| 名称 | 松崎養鶏場 |
| 住所 | 茨城県石岡市細谷 |
| その他の情報 | ※このページの情報は、2025年9月時点のものです。 |
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