いばらきの食に挑戦する人たち
花貫フルーツほおずき倶楽部 蓬田(よもぎだ)茂(高萩市)
花貫の大自然が育てるほおずき
茨城県の北東部に位置する高萩市は、海、山、川に囲まれた自然豊かな地域です。北に関根川、南に花貫川という2つの川が流れており、花貫渓谷は、紅葉スポットとしても人気です。花貫渓谷のほど近く、山間部にある大能(おおのう)地区に、フルーツほおずきの栽培・加工販売を行う「花貫フルーツほおずき倶楽部」があります。花貫フルーツほおずきの旬は8月中旬~10月下旬。とても繊細な作物で、夏の暑さに弱い為、夏も冷涼な大能地域は、ほおずきの栽培にとって絶好の立地条件です。加えて、畑の周辺には川が流れている為、湿った環境を好むほおずきには最適な環境がそろっています。 果実の大きさはミニトマトほど。フルーティーな香りと、甘酸っぱい味が人気です。和紙のような萼(がく)を剥いて生で食べるのはもちろん、県内外のホテルや洋菓子店などで、ほおずきの芳醇な風味を活かしたスイーツや食材として使われるなど、料理人からも注目を集めています。 蓬田茂さんが「花貫フルーツほおずき」の栽培を始めたのは、平成19年のこと。当時、会社員で定年を間近に控えていた蓬田さんは、花貫渓谷のほど近く「花貫物産センター」の裏手に、趣味であった木材加工の工房を建て、畑にほおずきの苗を植えました。 「花貫物産センターでは、自分で作った木工細工を持ち込んで販売していました。ある日、お客さんから『ここには何度来ても同じものしかないね。』と言われ、悔しくなりました。『今に見てろよ、俺がほおずきで何とかしてやる』という気持ちが湧きあがりました。」それが、蓬田さんがほおずきを本格的に作り始めたきっかけだったそうです。
蓬田茂さん
それまで農業とは無縁の生活を送ってきた蓬田さんは、ほおずきを本格的に栽培する為、栽培の盛んな“秋田県、山形県、岩手県”などに足を運び、農場を視察し、栽培のイロハを学んで実践したそうです。 「栽培で大変なことは、乾燥に弱いほおずきの樹の根元が乾かないようにマルチを張ること、トマト栽培のように支柱を立てて枝を這わせること、そして最も大変なのが、枝を剪定して、通風・採光等を良くする整枝剪定の作業です。」と蓬田さん。また、一粒一粒手作業で行う収穫作業も、「実を包む萼(がく)を割らないよう慎重に行わなければならない」と言います。収穫したほおずきは、扇風機などの風にひと晩当てて、熟成。「こうすることで、酸味が抜けてまろやかな味になるし、艶も出る。」のだとか。年々栽培技術は上がり、蓬田さんの声掛けで花貫近隣の生産者も増えました。平成26年には、蓬田さんが発起人となり「花貫フルーツほおずき倶楽部」を発足。現在(平成29年)会員は19名で、年間約8万粒ものフルーツほおずきを出荷しています。
花貫フルーツほおずき
「花貫フルーツほおずき倶楽部」で栽培しているのは「ゴールデンベリー」というもので、脂肪肝や動脈硬化などの予防及び神経細胞の働きを助けるイノシトール、ビタミンA・B1・B6等のビタミン類が豊富な食材として近年注目を集めています。 味は、甘さと酸味が絶妙なマンゴーのような風味で、噛むほどにフルーティーな香りが口の中に広がります。 生果は、パック及び贈答用パッケージ(要予約)での販売で、贈答用パッケージは『いばらきデザインセレクション2016』知事選定を受賞しました。また、加工適性にも優れています。 花貫物産センターでは、“花貫フルーツほおずきソースがけソフトクリーム”やカップアイス、ジャムなどの加工品も販売しており、好評を博しています。アイスは、『茨城おみやげ大賞2016最高金賞』を受賞しました。
高萩の新特産品誕生
花貫フルーツほおずき(生鮮)の販売先は、あえて「花貫物産センター」等に限定しています。これは、蓬田さんの「自然豊かな花貫に足を運んでもらいたい」という想いから。それまで「同じものしかない」と言われてきた同センターには、かわいい橙色の彩りが加わり、夕方には品切れになってしまう日も多いそうです。 「高萩市や県の担当者が頑張って支援してくれたお陰で、高萩の新しい特産品としてどんどん売り出せるようになりましたし、“花貫フルーツほおずき”という名前も付きました。また、栽培を手伝ってくれている“地域おこし協力隊(※)”のみんなが、自作でホームページを作ってくれたり、SNS等でこまめに情報発信してくれたりしたことがマスコミの目に留まり、テレビ取材等も増えています。」 ※地域おこし協力隊(制度概要)…都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、生活の拠点を移した者を、地方公共団体が「地域おこし協力隊員」として委嘱。 隊員は、一定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの支援や、農林水産業への従事、住民の生活支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組。 -総務省HPより引用-
1 月 | 2 月 | 3 月 | 4 月 | 5 月 | 6 月 | 7 月 | 8 月 | 9 月 | 10 月 | 11 月 | 12 月 |
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「皆さんの支援のお陰で、“花貫フルーツほおずき”の知名度はどんどん上がっています。ですが、これだけで終わらせたくありません。今、地域おこし協力隊として栽培の手伝いをしてくれている方々は、『協力隊の期間が終わったら、ここに就農して移住したい』と言ってくれています。こういう方が1人でも増えるように、ほおずきの栽培・販売を通して、地域を活性化していけたらと思います。また、地元の農家さんには、畑の隅に、数本からでもいいからほおずきを植えて欲しいと思います。新しいものを作り、それがきちんと売れるものであれば、農家さんも活力が湧くと思うんです。ほおずきで、高萩の底力を見せたい。」と蓬田さん。 花貫フルーツほおずきの小さなひと粒には、高萩・花貫の大きな可能性が秘められています。
インフォメーション | |
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名称 | 花貫フルーツほおずき倶楽部 |
住所 | 茨城県高萩市大能1100-2 |
お問い合わせ |
TEL: 090-7016-6537
FAX: |
WEBサイトURL | http://hananuki-fruitshozuki.com/ |
その他の情報 | この情報は、平成29年10月時点のものです。 |
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