いばらきの食に挑戦する人たち
藤枝いちご園 藤枝 敏広(石岡市)
第7回茨城いちごグランプリ「大賞」受賞
藤枝 敏広さん
藤枝 一恵さん
石岡市の国道6号線のほど近くにある「藤枝いちご園」は、藤枝 敏広さんと妻の一恵さんの夫婦2人で営むいちご園です。直売所には、藤枝いちご園のいちごを求めてやってくるお客さんが絶え間なく訪れる人気のいちご園です。 栽培品種は、茨城県が開発したオリジナル品種のいちご「いばらキッス」。 「いちご園を始めた当初は、“いばらキッス”と“とちおとめ”を半々で作っていたんです。でもお客さんが一度いばらキッスを食べると、それ以降いばらキッスしか買わなくなってしまって(笑)。それからはとちおとめをやめて、いばらキッス一本で勝負しています」と藤枝さん。 藤枝さんのいちごの特長は、まず芳醇な香り。部屋に1パックあるだけで、部屋中がいちごの甘~い香りでいっぱいになるほどです。さらに、葉の根元まで真っ赤に完熟した艶やかな果肉は、濃厚な甘さでジューシー。適度な酸味もあり、いばらキッスという品種の素晴らしさが余すところなく活かされた、とても美味しいいちごです。 藤枝いちご園の「いばらキッス」は、第5回、第7回茨城いちごグランプリ(※)【いばらキッスの部】で「大賞」を受賞しており、さらに、第7回同グランプリでは、最も点数の高かった者に与えられる最高賞『茨城県知事賞』も受賞しています。 ※茨城いちごグランプリ…茨城県いちご経営研究会主催の年に1度の審査会。茨城県内各地のいちご生産者が栽培したいちご、栽培現場、管理方法を対象に審査が行われ、生産技術の腕を競い合う。
サーファーからいちご農家に転身!
藤枝さんは、平成5年からおよそ20年間、同市内にあるサーフショップ“TF SURF SHOP”のオーナーとして店を切り盛りするバリバリのサーファーでした。 「サーフショップのオーナーは、メーカーからサーフボードやウェットスーツ等を仕入れてお客さんに提供するタイプの人と、自分で作ったサーフボードをお店で売るタイプの人の2パターンいるのですが、僕は前者でした。そんななかで、いつからか『自分の作ったものでお客さんが喜び、笑顔が見える仕事がしたい』という気持ちが拭えなくなってきたんです。元々実家が農家で、僕も兼業で実家の手伝いはしていたので、土地はあるし農機具もある。だったら思い切って農家をやろうって。後者だったら、農家をやろうとは思わなかったかもしれません」 それから平成26年にサーフショップを友人に譲り、藤枝さん夫妻はサーファーからいちご農家への転身を遂げたのです。 「最初の3年は、慣れない仕事にもう泣きながらいちごを作っていました。サーフショップと違って相手は生き物ですし、農家は気が休まる時が無いんですよね。でも3年過ぎたころから、少しずついちごのことが分かってました。でも今も必死ですけどね」と一恵さんが笑います。
ゼロからのスタート
真っ赤に完熟した艶やかな藤枝いちご園のいちご
みつばちが懸命に働くハウス内
兼業農家とはいえ、いちご作りは全くの初心者。持ち前の勘の良さと夫妻の努力で、なんとか味の良いいちごを作ることはできたそうですが、最初の2年間は栽培期間中に安定した出荷がほとんど出来なかったと言います。 「最初は失敗もしました。なにせゼロからのスタートなので、何が良いのか悪いのかも全くわからない。そんななかで、行方市内のいちご農家さんが師匠になってくれて、その方に圃場に来てもらって指導を受けました」 そのほかにも、サーフィン仲間でいちご園を営む友人と情報を交換したり、県内のいちご農家の先輩方とも知り合うことができ、栽培を始めて3年目を迎えたころから、安定した出荷ができるようになったそうです。今でも、困った時に相談できる師匠や先輩方の存在は、藤枝さん夫妻の心の支えとなっていると言います。
「いばらキッス」の魅力
「“いばらキッス”は本当に香りがよくて、甘さが濃厚。抜群においしいのが魅力です。茨城で作ってるんだから、茨城のいちごを作りたいし、『こんな美味しいいちごがあったのね』って、とにかくお客さんの反響が凄いです。SNSで知り合った奈良の方にお送りしたら、あまりの美味しさにすごく驚いたと仰っていました」と一恵さん。 「“いばらキッス”と“とちおとめ”は、管理の仕方が正反対なんです。だから、とちおとめの栽培に慣れている方は、勝手が違って慣れないみたいなのですが、僕たちは初心者なので、栽培経験から来るカンや先入観が無い。これは新しい品種を作るうえでは、強みかもしれないですね」と藤枝さん。 藤枝いちご園のビニールハウスは、ハウスの間隔が通常の倍以上と広くなっていますが、これは「日の光を多く取り入れて、光合成を活発にするため」です。いちごの味と艶に大きな影響があるそうです。 土作りには有機質の肥料を使い、化学肥料は使いません。さらに、極力農薬は使いたくないと、天敵を利用した害虫防除を行い、取材時の2019年の2月時点では、今作1度も農薬は使っていないとのことでした。
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今後の展望をお聞きすると、藤枝さん夫妻は口を揃えて言います。 「“いばらキッス”といういちごを、もっともっと沢山の人に食べて欲しいです。まだまだ知らない人が多いので、茨城のいちごってこんなに美味しいんだよってPRしていきたいです。あと、これから茨城でいちご農家を始めようと考えている人には、ぜひ“いばらキッス”を作ってくださいと声を大にして言いたいです。いちごは、安定した出荷ができれば『儲かる農業』です。それも含めて、“いばらキッス”といういちごの素晴らしさを伝えていけたらと思います。」
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