いばらきの食に挑戦する人たち
農事組合法人 つくばねファーム 小辻 孝輔さん(つくば市)
茨城いちごグランプリ「大賞」受賞
つくばねファーム いちご農園入口
農事組合法人 つくばねファーム 小辻 孝輔さん
つくば市にある「つくばねファーム」は、筑波山のすそ野にかまえた1000坪のビニールハウスが目印の、「摘みたていちごの直売」と「いちご狩り」が人気のいちご園です。品種は、「紅ほっぺ」を主力に、「いばらキッス」、「恋みのり」、「おいCベリー」等4種類を生産しています。 つくばねファームのいちご(紅ほっぺ)は、第7回茨城いちごグランプリ(※)一般の部で「大賞」を受賞しているほど、その味はお墨付き。受賞について代表の小辻さんは、「光栄ですし、ありがたいです。チームで栽培にあたっているので、直売所に表彰状を飾らせてもらって、スタッフ一同士気が上がっています」とコメントしてくれました。 ※茨城いちごグランプリ…茨城県いちご経営研究会主催の年に1度の審査会。茨城県内各地のいちご生産者が栽培したいちご、栽培現場、管理方法を対象に審査が行われ、生産技術の腕を競い合う。
農業と科学が融合する街
手作りのシートに土を入れて栽培しています。
つくばねファームの駐車場で出迎えてくれるのは1匹のヤギ。ヤギは、いちご狩りに来る子供たちの人気者で、「いちご狩りをしたら、食べたいちごのヘタは、最後にヤギにあげてください」というのが園の方針です。 いちご狩りがしやすく、かつ、たくさんのいちごを生産するため、園内のいちごは手作りの2段の棚で生産されています。棚には、有機分をたっぷり含んだ土に、乳酸菌・納豆菌・酵母菌・光合成細菌などの微生物を自家発酵させてブレンドした手作りの肥料を入れています。 「もったいない病なんですよね。買うより自分でできるしくみを作りたい。肥料は研究所に分析してもらって、質の良さは最重要視しています。おいしいいちごができて、ゴミが良いものに変わるというのが楽しいんです」と小辻さん。 さらにつくばねファームでは、日本屈指の研究都市・つくば市という立地を活かし、農業と科学とが融合した栽培を行っています。「科学がある街。つくば市はそこが特殊だし、農業をやるうえでもそこは恵まれていると思います」と小辻さんは言います。
農業は「つながっていく仕事」
小辻さん自身、筑波大学の卒業生で専攻は考古学。 「しくみを考える・想像する」ことが好きで、在学中に市内の田植えの手伝いをした時に、農家のおじいさんがふともらした50年後のビジョンに感銘を受けたといいます。 「50年後はおじいさんもうこの世にいないでしょ。でもそんなこと関係なく、『こうなってたらいいな』と話すおじいさんの、今日楽しそうな姿を見ていて、農業って『つながっていく仕事』なんだな、と思ったんです」 さらに、在学中の恩師の「何をやるにしても、つくばは良いところだよ」という言葉にも背中を押され、卒業後に1年間他業種の営業職に就いたあと、2007年に「農業生産法人つくばねファーム」の代表を引き継ぐことになりました。
いちごと寝る生活
「ただ見て、ひたすら観察する」。それが一番のこだわりなのだそう。
「ただ見て、ひたすら観察して考える。毎日、“分からない”からはじめる」。それが一番のこだわりという小辻さん。 「トマトのビニールハウスが空いていたので、そこでいちごを作り始めました。いちごは、直接食べられるし、みんなが好きだし、僕が考えていた“人が集まる場所作り”がしやすい作物だと思ったんです。近くにいちごの生産法人があって、研修させていただけたことも大きかったです」。 代表とはいえ、実状は小辻さんひとり。当時は、自動の暖房設備を入れる資金も無かったため、ハウスのなかで寝袋で寝て暖房のスイッチを手動で入・切していました。 しかし所詮は素人、1年目に作った苗は全滅。2年目は全滅までとはいかずとも、まだまだ収穫量は足りませんでした。 「初年度は設備も整っておらず、温度差が大きすぎて、収量はすごく少なかったのですが、甘くはなりました(それは高い授業料でしたが、学びにつながりました(笑))。意気揚々と店にのぼりを立てていちご並べたんですが、誰もここでいちごを売ってるなんて知らないので、当然誰も買いに来ないんですよ(笑)」 そこで小辻さんは、ブログを始め、パソコンでフライヤーを作り、いちごと一緒に近隣の飲食店に配り歩きました。 ブログの効果と、いちごを食べた飲食店からの問い合わせでじわりじわりと認知度は上がり、2010年頃には『予約の取れないいちご狩り園』といわれるほどの人気のいちご園となりました。 つくばねファームのいちごは甘く、濃厚で、ジューシーです。スタッフも増え、取材した日も園内は、いちご狩りや、摘みたてのいちごを求めてやってくるお客さんであふれていました。
みんなが気軽に集まる空間作り
ピースフルで誰にでもフラットな小辻さんのもとには、就農の相談や、市内の研究所からの共同研究依頼などに訪れる人が後を絶ちません。繁忙期には、近隣の農家さんが手伝いに来るなど、つくばねファームには常に沢山の人々が出入りしています。 「僕自身、農業を始めてまだ10年なので、今もわからないことだらけです。ただ“しくみ”を考えたり、想像したりすることが好きなので、いちごのヘタはヤギのごはんになることだったり、苗に花が付いたり、実が実っていったり、そうした『生産は続いていく』ことを、自然と感じられる場所作りをしていきたいと考えています。手段は共有していけばいい。単に「いちごを買う」だけの場所ではなく、生産するスタッフも、来園してくれたお客様も、ここに来てくれたみんなの「やってみたい」を実現する、みんなが生産的になれる空間作りをしたいんです。「おいしい!」「楽しい!」が入口で、そのなかで、じんわり感じる楽しさって何だろうって考えるきっかけになればいいなと思っているんです。」 小辻さん自作の直売所は、新しくもレトロでおしゃれな雰囲気で、とても素敵な空間です。フラっと立ち寄った外国人に描いてもらったという壁画、むき出しのライト。キッズスペースには、子供が壁をのぼれるようにホールドが付いていたり。小辻さんのそうした思いは、園内の至るところに垣間見ることができます。
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冬のつくばねファームの直売所の中は、あま~い焼き芋の香りでいっぱいです。というのも、2017年からさつまいも(紅はるか)の生産も始まったからです。 「いちごもさつまいもも、出口が広いんですよ。B品をそのまま焼いたり冷凍したりして売ることができたり、ジャムやペーストなどの加工もできる。だからさつまいもを作り始めました。もともとマイペースで、ビジネス思考がまだまだ弱いところが欠点ですが、「なぜやりたいか」があるなら、臆せずチャレンジするべきだと思っています。さつまいもは大口の卸先を見つけて、販売管理費を抑える。そうして農閑期を埋めるかたちで、いちごとの経営バランスを取っているというのも理由のひとつです。いずれは、いちごもさつまいもも、畑で一次加工ができるしくみ作りができれば、各地方に仕組みを共有していけると考えています。」 以前は物を書くのが好きで、農業への取り組みも、当初はノンフィクションのドキュメンタリーだと考えていた小辻さん。「いずれはこの経験を皆に伝えたいが、今はまだまだインプットの時期。今を良くして、そこにつながる未来を考えていきます。」と語ってくれました。
インフォメーション | |
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名称 | 農事組合法人 つくばねファーム |
住所 | 茨城県つくば市和台原1494-24 |
お問い合わせ |
TEL: 029-869-0069
FAX: |
WEBサイトURL | http://tsukubanefarm.com/ |
その他の情報 | ※この情報は2019年3月時点のものです。 |
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