いばらきの食に挑戦する人たち
JA水郷つくばグラジオラス共選部会 萩島 一郎さん(土浦市)
年間約200万本ものグラジオラスを出荷
グラジオラスと萩島さん
茨城県オリジナル品種「プリンセスサマーイエロー」
グラジオラスは、アヤメ科の多年生植物で、茎の先に花が穂状に下から上へと咲いてゆく花です。高さ110cm前後もあるグラジオラスは、冠婚葬祭の業務用途が一般的で、フラワースタンドや贈答花などにも多く使われています。 茨城県は、球根生産全国1位、切花生産全国3位を誇る、グラジオラスの一大産地で、土浦市、石岡市で栽培が盛んです。 白、ピンク、黄色、紫など様々な色と品種が栽培されており、土浦市だけでも30種類以上と非常に多くの種類があるなか、「常陸はなよめ」「プリンセスサマーイエロー」といった茨城県オリジナル品種の栽培も行い、高い品質と優美な花色は県内外で高い評価を得ています。 土浦市の「JA水郷つくばグラジオラス共選部会(部会員12名 2019年現在)」は、年間約360万本のグラジオラスを出荷する、国内トップクラスの部会です。 部会員の萩島 一郎さんは、6haの圃場で、12名程のスタッフと、年間約200万本ものグラジオラスを出荷し、個人としては全国トップの出荷量を誇る農家さんです。 切り花生産を始めた父親の跡を継ぎ、生産者の都合よりも顧客のニーズを意識した品種を導入しました。現在は、生産のみに留まらず、『日本の文化に花のある暮らしを定着させたい』と、花のイベントを開催するといった草の根活動も精力的に行っています。
畑をシェアしてローテーション
グラジオラスの圃場
萩島さんのグラジオラス
グラジオラスは、球根を定植してからおよそ80日間で収穫を迎えます。一面カラフルな花畑、、、と想像する方も多いと思いますが、実は圃場は一面緑色。使用される場所で咲き始めないと商品にならないため、つぼみのうちに収穫し、予冷庫に保管された後、出荷されます。 グラジオラスに専作農家はおらず、萩島さんも米や野菜などを作りながらグラジオラスを作っています。というのも、グラジオラスは同じ圃場で栽培を続けると連作障害を起こし生育不良になるため、圃場の利用をソルゴーなどの緑肥と野菜等とを組み合わせて3~4年に一度のサイクルで栽培しなければならないためです。 萩島さんは、自社の圃場のみならず、近隣農家と組んで畑をシェアしながらローテーションを行うという、少し特殊な輪作方法を取っています。
輪作の生姜畑
輪作のねぎ畑
「近所の稲作や野菜農家さんに、『定植や収穫など人出が必要な作業は手伝うから、細かな栽培の管理をお願いできないか』と話をしたら、賛同してくれて。お互いの得意分野を活かすために、野菜農家との畑のシェアリングに乗り出しました。お互いに借りている畑を同じくらいの面積で交換しているイメージです。今はそうして米とねぎ、生姜を作っています」と萩島さん。 「でも、肝心なのはグラジオラスとの相性です。水田にする(水を張る)と、連作障害の原因と思われる物質が地下に流れると考えられており、1年おきにグラジオラスを作れています。他にもサイクルを縮める組み合わせなり方法を検討している最中です。」
夏季の安定生産のために
遮光ネットをかけた圃場
グラジオラスは、花にとって過酷な夏季にも栽培を行う花です。 萩島さんは、日差しが強くなる梅雨明け時期から9月ごろまで、「遮光ネット」を圃場にかける栽培を行っています。これにより、日焼けでB品になってしまう花が劇的に減ったそうです。 さらに、夏季の水不足による品質の低下を防ぐため、井戸が近くになくても使用できる移動式のスプリンクラーを試験的に導入。「費用対効果を見ても、これらを導入した方が良い結果が出ているので、これからも使用していきたい」と言います。 また、部会全体では、秋冬の農閑期に出荷できる新しい品種を作ろうと、試験的な栽培を始めたそうです。
1 月 | 2 月 | 3 月 | 4 月 | 5 月 | 6 月 | 7 月 | 8 月 | 9 月 | 10 月 | 11 月 | 12 月 |
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萩島さんに今後の展望をお伺いすると、「日本の文化に花のある暮らしを定着させて、花の需要を伸ばすことが、最大の目標です」と即答してくれました。目標実現の一歩として萩島さんは、毎年2月に「イーアスつくば」で、“フラワーアレンジメントプレゼント抽選会”や、“展示”、“花飾りヘアーショー”に“LIVE花束制作”などを行うイベント『フラワーバレンタイン in Tsukuba』を、2016年より毎年開催しています。 「自分の生活のことだけを考えたら、グラジオラスだけ作っていれば成り立ちます。でも、縮小傾向にある花業界全体のマーケットを、どうにかして上向きにしたいんです。イベントをやって花が売れるようになるとは考えていません。でも、花を人の目に触れさせる機会を作ることで、それを見たなかの1人でも、花屋さんに足を運ぶきっかけになったら…と願ってやっています。動けるうちに、何かしら行動しないと何も変わりませんから。」 今後は、イベントだけでなく、人々が花屋以外でも手軽に花が手に取れるよう、コンビニや量販店への営業活動もしていくと熱く語ってくれた萩島さん。生産者として、「花が日常にある生活」の提案を続ける萩島さんの挑戦は続きます。
インフォメーション | |
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名称 | JA水郷つくば 営農部 |
住所 | 茨城県土浦市田中1丁目1-4 |
お問い合わせ |
TEL: 029-823-7001
FAX: 029-824-5011 |
その他の情報 | ※この情報は、2019年7月時点のものです。 |
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