いばらきの食に挑戦する人たち
高品質な栗作りを目指して 兵藤昭彦(かすみがうら市)
四万騎農園(しまきのうえん)
茨城県は栽培面積・生産量とも全国第1位を誇る栗の生産地で、収穫量・生産量共に全国の四分の一の量を担っています。主な生産地は、笠間市、かすみがうら市、石岡市。なかでも、かすみがうら市(旧千代田町)は、茨城で初めて栗の栽培を行った、県内の栗生産発祥の地といわれています。そんなかすみがうら市の通称“果樹園通り”の一角に、四万騎農園はあります。 兵藤昭彦さんは四万騎農園の3代目。祖父・兵藤直彦さんが大正8年に栗の樹を植え、昭和前期にあった栗ブームを牽引。父・保さんが土づくりを徹底した高品質な栗生産の技術を確立し、昭彦さんへと受け継がれました。現在はおよそ15ヘクタールの畑で約11品種の栗の生産を行っています。 「かすみがうらの周辺は多くが赤土の軽い土。果樹作りには向いているけれど肥料分が少なく、昔は草も生えない土地だったようです。」と昭彦さん。そこで父・保さんが、畜産系の有機質肥料を中心とした“たい肥”を使った土づくりを行い、土壌を改良した結果、今では栗の木はもちろん、草も生い茂る元気な畑となっています。 「草の色や状態をひつの目安にして、土に肥料が行き届いているか判断します。」 栗収穫のピークを迎える9月~10月になると、四万騎農園の栗畑は、整列した栗の木と草の緑のコントラストが美しい見事な景観になります。
セオリーの無い栗作り
四万騎農園の栗畑は、木の間隔を広くとっています。この理由について、「栗は、作り方の“セオリー”が無い作物なんです。研究結果も多数あって、どんな技術を使っていくかは生産者次第。ここでは、木の根が隣の根と絡んで土の養分を奪い合わないように、この方法を取っています。」と兵藤さん。 栗の木のピークは20年前後。苗を植え、本格的に収穫ができるまで7~10年かかります。土づくりに加え、何年も先を見据えた“間伐(かんばつ)”※を行うことも、とても気を使う工程だと言います。 「ここではは毎年、古い木から新しい木への入れ替えを行います。新しく植える品種は安易に選ぶとうまくいかないので、1年後、5年後、10年後のことを考えて決めます。読み間違えて、“失敗した~!”と思うときももちろんあります。間伐をするか剪定をするかは木の根元から枝に向かって順番に見ていき、周りの木との今後のバランスも考える。どこをどう切るか、間伐するか、またはあと一年は残しておこうか、とか。」 今は多く作っている品種でも、10年後は違う品種が求められているかもしれない。どの品種をどれくらい作っていくか、ここも先を見据えた未知との戦いなのだそうです。 (※)間伐とは…成長に伴って混みすぎた林の立木を一部抜き伐りすること。
マロン・ジャム
四万騎農園では、生栗に加え、渋皮煮、ジャムなどの加工品の製造、販売を行い、多くの固定客をつかんでいます。また、それらを販売する開放的な明るい店舗も併設され、買いやすさにも心を配っています。 「栗の渋皮煮というのは、熟練の職人でも作るのが難しい商品とされています。というのも、栗自体の良し悪しで仕上がりが決まってしまうごまかしの利かない商品だからです。私達は、加工品作りでは素人ですが、品質の管理も含めた高品質な栗作りには自信があります。だからこそ、渋皮煮でなら勝負できると販売を始めました。」 この渋皮煮をベースにして作ったのがマロン・ジャムです。味は、「プレーン」、「ラム」、ブランデーの香り高い「オー・ドゥ・ヴィ」の3種類。ツブツブの栗が残るセミペーストタイプで、栗感抜群。今や四万騎農園の代名詞ともいえるほどの人気の商品となっています。
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高くそびえるヒノキと、塀にぐるりと囲まれている四万騎農園。入口からは、どこか“一見さんお断り”のような、厳かな雰囲気が漂います。しかし当の本人達はまったくそんなつもりはないのだとか。 「園を塀で囲ってあるのは昔のままなだけですが、お客様が入りにくい雰囲気を作ってるようです。『入っていいものかと悩んだ』とよく言われるのですが、わざとではないんです。今年からマロンソフトクリームの販売を始めたので入口に看板を出したら『ソフトクリームやってるなら大丈夫、と安心して入れたよ』というお声も聞くようになりました。」兵藤さんは言います。塀のせいでちょっと入りにくいと感じる方もいるかもしれませんが、気軽に訪れてみてください。
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