いばらきの食に挑戦する人たち
農業を目指す人を育てる場所を作りたい! 涌井義郎(笠間市)
あした有機農園代表
涌井義郎さんは、鯉淵学園農業栄養専門学校の教員として30余年の勤務を経て、農業を目指す人を育てる場所を作りたいと、「あした有機農園」を設立しました。また、笠間市の国道30号線沿いにある「鯉渕学園直売所 農の詩」の生みの親でもあり、現在、NPO法人有機農業推進協会理事、技術士事務所「有機農業の技(わざ)研究所」の主宰を務めています。 「有機農業の勉強は1995年頃から始めました。当時、JICA(ジャイカ)の技術保管研修の講師をしていたのですが、途上国側から“化学合成農薬や化学肥料を使わない農業を教えて欲しい”との要望が非常に多かったのです。というのも、途上国にとって化学肥料などは非常に高価なもの。“地域で手に入る資源を活用して作物を作りたい”との声に応えるため、また、私自身も有機農業に興味があったので、これを機に学生達と一緒に農場見学に行ったり、本を読んだりして勉強を始めました。」 あした有機農園はひとつの提案だと語る涌井さん。自身もいち生産者として野菜を作り、販売しながら、農業を勉強できる場を作りあげました。
地域資源の循環
涌井さんの有機農業における基本的な考え方は、化学肥料などを使わずに地域資源の循環により、農作物を作ること。特に『地域資源の循環』は非常に大切なことだと言います。 「有機農業の基本理念は“環境を守りましょう”という考えに基づいたものです。日本は諸外国に比べて、家畜の餌、木材、食糧などの輸入量がとても多い。これらは全て有機物です。大量の有機物は腐る過程で、土壌を汚すこともあります。土が汚れるということは、農家にとって大きな問題です。ですから、輸入に頼るのではなく、地域にある資源を極力使った土で作物を作りたいのです。」
自然との共生
あした有機農園の畑には、草が生えていたり、藁が敷かれていたりします。それは時には虫の隠れ場となり、時には作物の天敵が好む草だったりもします。 「これにはいろいろな目的がありますが、例えばカエルなどは作物に付く害虫をよく食べてくれるとても大切な生き物なんです。草が生えていることで、カエルが隠れる場所ができて、結果、害虫を駆除することができます。」 涌井さんは、自然を抑制せず、草木、動物、虫などの生命活動の循環を促す農業を行うことで、未来の農産食料の安定的な確保を目指しています。こういった考えに共感した若者たちが、毎年研修生として涌井さんの元に集います。
有機質肥料を使った土づくり
農業の基本は土づくり。有機農業は、地域にある草木や生ごみ、家畜糞などを使った堆肥を作り、作物が病気になりにくい健康な土を作るところから始まります。あした有機農園にも、それらを使った堆肥の山が各所にあり、腐葉土は苗用、堆肥は畑用など、それぞれの目的に合わせて作られていました。 「化学肥料などを使って作物を早く育てると、中身の成分が薄くなり、苦みや辛みが増える場合があります。一方で私達のように堆肥などの有機質肥料を使って一年一作の“旬”の野菜を作ると、栽培には時間がかかりますが、味の濃い、中身(密度)が濃い野菜を作ることができると思っています。」涌井さんは、研修生達に、「環境に良くて、体に良い、おいしい野菜を作っていこう」と教えているそうです。
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近年の農業は、資材の高騰、高齢化や跡継ぎがいないなどの問題を抱える一方で、農業とは無縁の世界で育ってきた都会の人達が就職の選択肢として農業を選ぶことが増えてきているそうです。そんな人達は特に“化学農薬や化学肥料を極力使わない農業”への関心が強いのだとか。 「特に有機農業は、ある日突然始められるものではないので、そういった人達の力になりたいんです。就農前に一年間でも二年間でも農業に携わって、基本的な技術を勉強する場を作りたいと『あした有機農園』を立ち上げました。巣立っていく子は毎年一人か二人なので、微力かもしれませんが、日本の農業の未来の為にはこういった取組が必要だと思っています。」 あした有機農園の研修生は現在3名。先日、昨年卒業した生徒が地元に帰ってきてめでたく独立を果たしたそうです。「全国各地にこうした“農業者を目指す人を育てる場所”がもっと増えるといいね」と続けて語ってくれました。
インフォメーション | |
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名称 | あした有機農園 |
住所 | 茨城県笠間市随分附1164-65 |
お問い合わせ |
TEL: 090-2426-4612
FAX: |
WEBサイトURL | http://ashitafarm.jp/ |
その他の情報 | ※この情報は2015年度時点のものです。 |
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