いばらきの食に挑戦する人たち
凍みこんにゃくを次世代へ繋ぎたい! 栗田晋一(大子町)
日本で3軒しかいない生産者
「凍みこんにゃく」は、冬の寒い時期に、藁を敷き詰めた田んぼのうえにこんにゃくを並べ、凍結と解凍を繰り返して作ります。完成品に賞味期限はなく、乾燥したままであれば50年は持つといわれる保存食です。 凍みこんにゃくは、茨城県北部の旧久慈郡地域(大子、里美、水府、金砂郷)で古くから作られており、江戸時代に丹波の国(兵庫・京都)より伝えられたといわれています。 実はこの凍みこんにゃく、全国で唯一、茨城県の3軒の農家だけがその生産を行っている“幻の食材”なのです。 大子町で凍みこんにゃくの生産を行う栗田晋一さんは、株式会社クリタの代表を務めています。 栗田さんが凍みこんにゃくの生産を始めたのは、取引先の凍みこんにゃく生産者・菊池さんが、「凍みこんにゃくの生産を辞める」と言ったことがきっかけだったそうです。 「うちで扱う凍みこんにゃくのほとんどは米沢市に卸しています。凍みこんにゃくは、実は米沢市ではポピュラーな食材なんです。それは米沢の郷土料理に“冷や汁(数種の乾物を戻して煮た具沢山のお浸し)”というのがあって、これに凍みこんにゃくは欠かせないためです。生産者がいなくなってしまったら、もう卸すことができません。」と栗田さんは語ります。 栗田さんが途方に暮れていたところ、菊池さんから「道具も全部ゆずるし、作り方もすべて教えるから」と提案を受けたことがきっかけで、栗田さんの挑戦が始まりました。
過酷な凍みこんにゃく作り
その日から3年間、栗田さんは毎日欠かさず菊池さんから凍みこんにゃく作りの教えを受けたそうです。 凍みこんにゃくは、まずこんにゃくを作り、できたこんにゃくをスライスして石灰水に漬け、約1週間後に藁の上に干します。その後は1日3回水をやり、干した5日目から水やりを止めて乾燥させます。次に陰干しをして、重ねてヒモでくくり、両サイドをカットして、再び乾燥し、ようやく完成です。 「大まかにはこれが一連の作業ですが、例えば干す初日の気温は-2度以下でなければならないことや、水やりの量もこんにゃくの状態を見ながら決めなければならないことなど、長年の経験と技術が必要です。菊池さんは長年培ってきた経験があるので、空を見て“明日は干さない方がいい”と言ったり、水の量も“目分量”だったりします。私はそれを計量して数値化しておくんですが、いざ一人でその通りやってみても、上手くいかないんです。」と栗田さんは苦労を語ります。やってみて初めて、凍みこんにゃくがここまで大変な苦労の末にできる商品であることがわかり、1枚約100円という決して安くないその価格も、生産者の立場になってようやく理解できたといいます。
凍みこんにゃくの料理法
凍みこんにゃくを料理するにはまず、そのまま15分ほど水に浸し、そのあとお湯で10分ほど煮てアクを抜いたら下準備完了。煮物を作る容量で出汁で煮るもよし、鍋に入れるもよし。凍みこんにゃく自体に味は無いので、どんな料理にでも合い、料理のうまみや出汁がよくしみ込んだ独特の食感を楽しむことができます。 栗田さんの奥様も「学校や地域のイベントで出したときに子供が大喜びするのが“凍みこんにゃくのフライ”。これを出すと飛ぶようになくなりますね。間にチーズを挟んだりしてバリエーションを出しています。さらにオススメなのが鶏すき焼きです。凍みこんにゃく独特の食感が鶏すき焼きにすごく合うんです。」
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現在凍みこんにゃくの生産農家は3軒しかなく、“幻の食材”と言われています。しかし栗田さんは凍みこんにゃくの将来に希望を持っています。 「次世代に繋げていきたいですね。滅びゆく素材ではなく、今後発展していく素材にしたい。国内でも食べてもらいながら、外国の方にも食べて、知ってもらう機会を設けていきたい。」 その希少性とおいしさから、昨年テレビで取り上げられたことをきっかけに、多くのメディアから注目を受け、売り上げも徐々に伸びてきているそうです。先日イタリアの催事に出展した際のイタリア人の反応は上々だったそうで、今後の動向からも目が離せません。
インフォメーション | |
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名称 | 株式会社クリタ |
住所 | 茨城県久慈郡大子町上岡23 |
お問い合わせ |
TEL: 0295-72-0658
FAX: |
その他の情報 | ※この情報は2015年度時点のものです。 |
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